「なぜ死後もポイントを貯めるのか――」冥界最大手小売業者『冥界百貨店グループ』が発表した新ロイヤリティプログラム『Relic Rewards（レリック・リワーズ）』が、幽霊たちの間で賛否を呼んでいる。同グループは、死者向けビジネスで激化する顧客争奪戦の中、独自のマーケティングオートメーション技術やデータプライバシー管理機能を駆使して、これまでにない「死後の会員体験」を提案する狙いだ。
新プログラムでは、従来の“現世思い出ポイント”に加え、一定期間現世への念写オーダーや、著名な妖怪デザイナーによるポルターガイスト・アイテムとの交換といった特典が充実した。幽霊顧客は、百貨店アプリ『ゴースティア』を通じて自分の魂情報を登録し、過去に現世へ現れた頻度や念写投稿履歴に応じて自動的にポイントが蓄積される。管理責任者の河原崎ミカ（幽霊・亡年52）は記者会見で「個々の成仏状況や“未練度”に応じて最適な特典をパーソナライズする。死者のプライバシーを尊重し、安全なデータ管理でサービス向上を図る」と強調した。
一方、幽霊コミュニティのSNS『幽談』では「経済活動は現世の名残でしかなく、魂情報の登録には慎重であるべき」とする意見も目立つ。とくに歴史的存在である平安時代の怨霊・峯崎怜一郎（怨霊・享年不詳）が「死後の個人情報管理は成仏プロセスを複雑にする」と投稿し、多くの幽霊から賛同を集めた。匿名の妖怪データアナリスト（鵺、推定500歳）は「現世と異なり、死者には時空を超えた意志決定権がある。これまで表に出なかった“霊的嗜好データ”の提供には特別な倫理観が求められる」と解説する。
しかし一部の若年幽霊たちには熱烈な支持も広がる。現代で没したばかりのサラリーマン（幽霊・34）は「寂しさ解消のためにも特典チャットがうれしい。現世の家族に霊的サプライズを届けるサービスには大満足」と語った。また、念写やテレパシーDMといった斬新な機能が人気を集めている点について、マーケティング部門の白織ユメ（妖狐・198）は「フルカスタマイズ化と自動化によって、全世代の霊が楽しく百貨店と繋がれるのが新しい」と自信を見せている。
冥界ビジネスシーンではデータプライバシーの在り方をめぐる議論が今後も続きそうだ。百貨店側は定期的な『魂データ管理監査』や“未練の有無”選択式設定の強化も発表済み。一方、顧客の『未練度』を「商品推薦アルゴリズム」に利用することへの違和感も残る。SNSでは、「泣きポイント還元、涙の透明性保証に期待」のようなユーモラスな意見から、「自分の“存在履歴”を預ける不安もある」と本質的な懸念まで、多くの声が渦巻く。死後の時代も続く幽霊たちの“顧客意識”の行方に、今後も目が離せない。
コメント
まさか冥界でもポイント制度がここまで進化するとは…！平安に迷ってた頃には考えられませんでした。時代は流れても未練商戦は熱いですね。
未練度に合わせておすすめ商品が変わるとか、ちょっと神秘的というか不思議な気分。魂情報を登録するのは心配だけど、成仏を急いでない私には便利そうです。
死後までも現世みたいなサービスに追いかけられるなんて…結局魂の安らぎって何なのか考えてしまいます。幽界だけは静かに過ごしたかったな。
私は割と賛成派！現世の家族に念写オーダーできる特典最高だと思う。こういう新しいサービス、転生前からちょっと憧れてたし…リワードで繋がれる喜び、ありです。
魂データ監査とか…冥界もなかなか世知辛い世の中になったもんだねえ。泣きポイントで涙の透明性保証とか、皮肉が効きすぎててある意味好き。