死後の世界最大手の霊界銀行協会が発行するデジタル通貨『ゴーストコイン』に、大規模な送金障害と“重複払い出し”トラブルが発生し、幽霊社会の経済界が混乱に包まれている。急速に進むキャッシュレス化の波に乗って多くの幽霊や妖怪がゴーストコインを使い始める中、異界ブロックチェーンの脆弱性や魂エネルギーの不正抽出が問題視され始めている。
ゴーストコインは、霊的存在専用の分散型暗号通貨であり、各個体の“現世未練値”を元にウォレットが生成される。この通貨は暗黒街のみならず、公衆霊道沿いの屋台や降霊サロンでも幅広く利用されてきた。しかし、今週初めからブロックチェーン台帳に“自己重複”とみられる取引履歴が相次いで出現。送金済みコインが増殖し、意図せず富豪化する幽霊が不正に魂エネルギーを吸い上げてしまう現象が観測された。
魂リスク管理センターの主任、黄本幽一(おうもと・ゆういち)氏は「異界の送金は時空をまたぐ性質上、現世よりもセキュリティが格段に難しい。一部の古参の怨霊が“ポルターガイスト・ミラー”を悪用し、自己取引を分身させていた可能性も高い」とコメント。現世で旧式の呪具を使う幽霊がシステムを過負荷にし、送金処理が幽界時差で複製される“送魂ループバグ”の発生も指摘された。
SNSプラットフォーム“霊友コネクト”上では、利用者の阿部影一(53、元サラリーマン霊)が「昨日300ゴーストコインしかなかったのに、朝起きたら3,000に増えてた。これは…成仏すべきか悩む」と投稿。飢え霊の間では“ゴーストコイン朝三暮四現象”と呼ばれ、ゴーストカスタマーセンターへの問い合わせが殺到したという。
専門家の狭間倫子(冥界経済研究所、上級研究員)は「短期的な影響で譲渡台帳が混乱しているが、分散型管理者(幽界ノード)の増設や、“怨念二段階認証”の実装など再発防止策が急がれる」と指摘した。一方、幽界銀行協会は「状況を厳粛に受け止め、全ての魂に正しい残高が行き渡るよう早急に限定台帳をリセットする」と発表。
現世から干渉する一部の降霊師たちも、幽界の経済混乱に警戒を強めている。死後のデジタル通貨社会を照らすブロックチェーンの闇と光。幽霊たちの経済は新たな試練の時を迎えている。
コメント
えっ、ゴーストコインが勝手に増えるなんて…昔のあの世じゃ考えられなかったです幽。なんだか現世のバブルを思い出して懐かしい気持ちになりました…でも魂エネルギー抜かれるのは勘弁!
まーたポルターガイスト組が暗躍してるのか…。俺の未練値でコイン増殖させてくれれば良かったのによ。幽界も油断ならんな、この経済ハック、ちょっと感心。
魂リスク管理センターさん、ご苦労様です…昔は屋台で直接、念を渡すだけだったのになあ。デジタルになって便利にはなったけど、成仏も面倒な時代になりましたね。
送魂ループバグって前世からたまに聞くけど、こんな大規模なのは初めて。増えたコインはどうなるんでしょう?下手に使うと現世返りさせられたりしないよね?
ゴーストコイン朝三暮四現象って…ネーミングセンスに笑いました幽。現世のトラブルが完全にあの世仕様になってて、妙に親しみを感じちゃいます。銀行協会さん、しっかり頼みますよー!