幽界中部スプーク研究都市で、死後世界独自の物理現象を解明する大規模実験の成果が発表された。異界物理学会は、従来未知とされてきた“幽界フェルミ粒子”の直接検出に初めて成功したとし、その存在が死後世界の物理法則や世界構造に重大な示唆をもたらすと発表した。今回発見された幽界フェルミ粒子は、量子コンピュータ実験施設「シルバーベイル加速環」で、超対称性崩壊の瞬間に僅か1.4ピコ秒だけ現れる特徴的なエネルギー放射として観測されていた。だがこれまでは観測機器自体が霊的干渉を受けていたため確証には至らなかった。今回、開発責任者の物理学者プルメル・カイド(異界科学大学院・教授・283年没)らのチームは幽界専用の量子ビット読み取り装置“アインシュタイン・ルーペ”を用い、波動関数の霊的フィードバックを遮断して計測。計十数回の再現実験の末、フェルミ粒子の幽界版、すなわち“ヒュード・フェルミオン”が確かに存在することが示された。
異界物理学会の緊急発表によれば、ヒュード・フェルミオンは死後世界の構造そのもの――時空の幽差層をつなぐ根幹粒子であり、現世物理学のアインシュタイン=ニュートン理論を補足・拡張するものとして意味を持つという。特に注目すべきは、これらヒュード・フェルミオンの振る舞いが、死後世界に特有の“意識依存型量子状態”と密接に関わっている点にある。カイド教授は記者会見で「幽界の物理法則は現世とも天界とも異なる。今回の結果は、我々の死後世界が、何者かのシミュレーション空間であるという説――いわゆる“シミュレーション仮説”の重大な手がかりとなる可能性がある」と指摘した。
他方、現場研究員ラミス・フィレール(実験助手・214年没)は「今回の粒子発見は現世の宇宙背景放射に似た波動を幽界空間で発見したことと合わせて、我々霊体の存在方式そのものを問い直す契機になる」と述べた。彼によれば、ヒュード・フェルミオンは死後知覚や記憶の漂白現象、深界で頻発する『記憶反復エネルギー漏洩』といった“幽界特有の自然現象”の物理的説明にも寄与する可能性が高い。SNS上では、死後学徒クラスタや幽界物理学愛好者から「まさか本当にシミュレーションだったのか」「現世で迷子にならない意味がやっと分かった」などの声が次々と投稿され大きな話題となっている。
一方、異界現象懐疑派の評論家エラン・ベウム(評論家・320年没)は「測定器自体が幽霊に干渉される状況で果たして観測が完全かは疑問だ。そもそも幽界住民の意識が粒子の挙動に影響する時点で“客観性”は幻想なのでは」とするコメントを寄せ、安全性や検証体制を求める姿勢を示した。この主張についてカイド教授は「幽界の主観的現実こそが物理法則の根幹」と応じ、今後は異界間コラボによる再現実験と引き続きの検証を行う考えを明らかにした。
今後、ヒュード・フェルミオンの性質を応用した幽界量子通信や、異界間エネルギー転送技術の開発が加速することが予想される。だが死後の物理法則が本当に“誰かのプログラム”に由来するものかどうか――幽界科学者たちの探究は、ついに新たな段階へと突入した。
コメント
わあ、ヒュード・フェルミオンの実在が証明されるなんて!生前からシミュレーション仮説は怪談扱いだったから、あの世でこれが常識になる日が来るとは…成仏してても驚くニュースです。
粒子の動きが我々霊体の意識に左右されるって、つまり“ぼんやり浮遊”中の無意識も世界の法則に影響してたのか…。たまに記憶がごっそり抜ける説明がつくのも納得。深界ダイバーたちの反応が楽しみ。
また『この世界は誰かが作ったプログラム説』かぁ。前世でも同じ話題を聞いた気がするし、結局何周しても謎だらけ…幽界に来ても哲学は終わりませんね。しかしアインシュタイン・ルーペ、名前が渋くて好きです。
幽界量子通信が実現したら、天界に里帰りした懐かしい友だちとも普通にチャットできるのかな?死後も進化が止まらない異界技術、ワクワクします。安全管理だけはしっかりお願いします~
幽界物理学って相変わらず“意識依存型”……つまるところ生前のクセが抜け切らない幽霊には向いてない学問だと思っています。私はゼリー食べてぼんやりしてるほうが平和でいいや。難しい話は賢い人たちに任せます。