幽玄の都・京都異界巡り完全ガイド――春の城跡とあやかしグルメを求めて

夕暮れの京都の古びた駅に桜が舞い、幽霊のような人影が淡く浮かぶ薄暗い写真。 旅行ガイド
春の京都に現れた幽玄な霊専用列車の出発風景。

春爛漫、桜の花びらが風に舞い散る季節。現世だけでなく、幽霊や妖怪たちもそわそわし始める。往年の雅やかな雰囲気に包まれる都・京都は、異界の住人たちにも大人気の旅行先だ。今回は、死者専用の新観光列車「霊洛線」復活運転を機に、異界の著名案内人・小泉幽二郎(ガイド・325年目)を伴い、春の京都異界巡り旅の最新ガイドをお届けする。

まず旅の出発点となるのは、名高き御霊山霊駅。ここでは桜の季節限定で、幽玄餅や吹き抜ける冷気を利用した“ひんやり霊まんじゅう”を味わうことができる。初日のコースは「月読城」跡巡りから始まる。城内は完全ガイドツアー方式で、うっかり封印を解かないよう注意が必要だ。「毎年、無断で入城し封印札を勝手に剥がす幽霊が絶えません。安全な旅のため、案内人には必ず従ってください」と小泉ガイドは忠告する。

続いておすすめなのが、京の異界グルメ名物としてSNSでも話題の“ぬらりひょんうどん”。これは透明な出汁に浮かぶ逆立ちした麺が特徴。妖怪グルメ評論家・丹波山己夫(145歳)は「食べている途中で形が変わるのが面白い。現世の人間には味わえない食感だ」と語る。一方、春限定の“夜桜ゴーストパフェ”も外せない。注文後、「実はこのパフェ、夜桜の下で亡くなった者しか姿が見えません」と店員に種明かしされ、SNSには「#桜パフェ見えない事件」と幽霊たちの嘆きを投稿する声も多数見られる。

宿泊先として密かな人気を集めているのは、市中の古い民家を改装した“転生止まり宿・百夜館”。チェックインの際、現世での忘れ物についてアンケートが実施されており、珍回答として「ゲームデータ」と答えた若い幽霊・南雲志穂(享年19)が話題を集めている。館内では“生前の悩みカウンセリング”も実施され、現役住職幽霊による法話、並びに“未練抹消ルーム”の新設が旅人たちに好評だ。

また、京都の春イベント最大の目玉といえば、神社巡りとアキバエリアを結ぶ“電脳縁結び祭”。現世の電子機器と異界の霊力が交差するこの祭では、妖怪エンジニア集団“映電堂”が開発した姿見アバターで恋愛運を占う企画が登場。専門家である恋愛指南妖狐・荻野白姫(440歳)は「相手の霊圧を感じ取るデジタルおみくじが若者に受けている。幽霊の告白も時代の波に乗った」と解説する。

現世の歴史と異界の伝統が融合する春の京都。それは、死者も生者も時空を超えて楽しめる唯一無二の旅先だ。今年もまた、幽玄の都を訪れる異界の旅人たちの期待が高まっている。

コメント

  1. わあ、今年も霊洛線が走る季節が来たんですね!生前は叶わなかった京都巡りが、今となっては毎年恒例の楽しみです。夜桜ゴーストパフェ、次は絶対“見える”ようにしてほしいなあ。

  2. 百夜館、懐かしいなあ。転生前の悩みカウンセリングで肩の重みが一気に取れた記憶があります。霊界も観光地化が進むのは面白いけど、封印札には本当に気をつけてくださいね…昔やらかしたことがあるので(冷汗)。

  3. 京のあやかしグルメ、現世じゃ味わえない驚きばかりで感動します。ぬらりひょんうどんの麺、何度見ても不思議だ。地縛霊の友人を誘って来月行ってみようかしら。

  4. アキバの電脳縁結び祭か…幽界もデジタル化の波が止まらんのう。ワシの若い頃は相手の霊圧なんぞ直に感じて恋しとったもんじゃが、まあ時代というやつか。

  5. 夜桜の下で成仏したから、パフェちゃんと見えるはず!去年失恋した身にはデジタルおみくじもありがたい…幽玄の都って、本当に死者の心に寄り添ってくれてる場所だなって思う。