霊界と現世を結ぶ主要物流拠点である冥界港で、ここ数週間、妖怪商社と亡者運送組合の間で貿易摩擦が急速に拡大している。近年活発化している“死後由来品”の輸出入において、新設関税や通関手続きの複雑化が、異界経済全体に大きな影響を与えはじめた。
過去数十年、冥界港では、死人の記憶の断片や怨念エネルギー、幽体素材といった商品群が現世へと大量に送り出され、逆に現世側からはパワーストーンや生命力リサイクル素材が流入してきた。しかし、今年始め頃から冥界側の「異質物質管理令」改定により、すべての現世製品に“生気度”証明書の添付が義務付けられた。これに現世の異物商協会が反発し、偽造証明書問題や輸送遅延が頻発している。
主要貿易企業のひとつである幽心交易の代表取締役、皐月小夜子氏(不詳)は、「本来、死後の世界と現世の交流は相互信頼が前提。今回のような厳格な管理は、不必要な疑念とコスト増を招くだけ」と発言。現世側代理として交渉に当たる生田永輔(通関士・43)も、「死者側指定の“霊障検査”は物理的に観測が難しく、合格基準が曖昧」と不満を漏らす。SNSでも、「遅延多発で幽体エネルギー不足の危機!」や「異界バナナ高騰、ミイラカビ屋涙目」といった声が相次ぐ。
状況を受け、冥界税関庁は海上輸送ルートの見直しと同時に、臨時の関税一部免除措置も発表。しかし、既に一部の妖怪物流会社が現世路線の運行を停止するなど、混乱は日に日に深まっている。特に影響が大きいのは、現世向けに死者の知識エッセンスを輸出していた“骨筆堂”社で、営業担当の原田夢介(幽霊・享年31)は「今回の摩擦で契約先10社の出荷がストップ。一刻も早い貿易正常化を」訴える。
経済評論家の鳥越法彦氏(霊的経済研究所)は、「冥界と現世の間では、物理と霊的原則が混在する独特の関税制度が長年課題。双方の認証技術や物流インフラ整備が追いつかず、不協和音を生みやすい」と分析。この事態の長期化により、現世の除霊市場のみならず、死後の世界の文化産業にも波及する可能性がある。
各方面で早期収束を求める声が強まる中、冥界当局は今週末に現世代表団との直接協議を予定している。異界間の物流の未来を左右する交渉に、各業界の目が注がれている。
コメント
昔はこんな複雑な関税なんてなかったのにねぇ…。亡者の頃、冥界港の市場でみんな行き交ってたのが懐かしいです。もう少し融通きかせてほしいものです。
生気度証明書なんて、また役人たちが妙なこと思いついたものだ。幽体素材の輸入遅延で、うちの骨細工工房も困ってる。はやく普通に戻ってくれ……。
そもそも霊障検査なんて、90年前の幽界渡航ブーム以来、曖昧な運用だったはず。どうして今になって厳しくしたんだろう?背景が気になりますな。
異界バナナの高騰、我が家のミイラカビたちも困ってるニャ。輸送再開しないとみんな餓えちゃうよ。冥界と現世って、こういうことで繋がってたんだって改めて実感してるニャン。
冥界の物流問題がここまで大事になるとは驚き。でも、現世も死後も、結局は経済でみんな繋がってるんですね。霊体暮らしもなかなか気が抜けません。