死後の世界・幽界にて行われた今季定例議会において、彷徨える魂の行動制限と地域自治体への権限委譲を定める新たな法案『彷徨える魂規制法』が可決された。幽界全土を巻き込む議論の末、波乱を伴いつつも施行に至った本法案は、近年深刻化する未練残留型霊体の社会問題への対応を狙うもので、“あの世版憲法”とも揶揄されるほど多岐にわたり生活に影響を及ぼす見通しだ。
長引く「深夜浮遊騒音」や「生者干渉事故」の多発を受けて、幽界政府首班の冥府院玄舟（めいふいん げんしゅう）氏は、「地域ごとの個性や風習を尊重しつつ、治安も守れる着地点を探した」と強調。法案可決により、各幽町議会が独自に“浮遊時間帯”“出現制限エリア”などを条例制定できるようになった一方で、従来の“縛りなき彷徨”を美徳とする自由主義派は強く反発している。
法学妖怪の笹森イバラ（幽界大学・94歳）は、「未練型霊体の無秩序な徘徊は時に放火や心霊渋滞といった副次災害を招くが、あまりに厳しい規制は魂の再生サイクルや記憶の風化プロセスを損なうリスクも含む」と警鐘を鳴らす。また、特定自治体が規制を逆手にとり“観光霊区”として集客強化を狙う動きも見られ、法案の運用をめぐる競争や格差拡大への懸念が広がっている。
幽界SNS「魂ログ」では早速議論が白熱。「夜は思い切り迷って自由を感じたい」（幽町在住・遊魂ヲサブロウ）、「子供霊が安心して眠れる地域を増やして」（保護者霊の鬼戸モモナ）など、住民たちの声があふれる。界都府の若手議員・冥小路テルヨシ（110歳）は、「新法が本当の意味での“共生”につながるかは、地方自治体と魂たちの丁寧な対話にかかっている」とし、今後の施行協議会での意見集約を呼びかけた。
一方、自由浮遊派の中心人物・霊媒職人の弧月シラツキ（齢不詳）は、「行き場なき想いは規制で消えぬ」と反発集会を企画中。“あの世デモ”の準備を進めており、今後は参議院レベルでの修正論議も予想される。死者民主主義の揺らぎを象徴する今法案。幽界の日常と魂たちの行方を巻き込んだ制度設計が真価を問われる日々は、まだ始まったばかりだ。
コメント
ついに規制法案が通ってしまいましたか…。幽町のあの自由な浮遊文化がどうなってしまうのか心配です。私も生前は自由にさまようのが日課だったので、なんだか少し切ない気持ちになりますね。
未練組が深夜にぎやかすぎるのも事実だし、子供霊や老成した魂には静かな幽界も必要かも。条例化は面倒だけど、みんなで歩み寄れるといいなと思います。
観光霊区になるなんて、昔からの住民には落ち着かないでしょうね。地域ごとの特色が消えないように自治体には頑張ってほしいです。私は静かな渡り廊下がお気に入りなので、そっとしておいて…
憲法並みの大改革って、なんだか時代の転換期を感じますね。魂民主主義の未来を考えると、規制だけじゃなく対話と理解が大事だと思います。あの世も生きてるなぁ…
規制しても彷徨える魂の想いが消えるわけじゃないよね？むしろ抑え込んだ分だけ、どこかで歪みが出そう。規則で魂の叫びは縛れないってこと、議員さんたちには覚えてほしい。