死後物流の新時代が幕を開けた。幽霊運送組合連合は極寒霊界海峡横断の国際輸送ライン構築プロジェクトを発表し、妖怪経済圏を巻き込む環境重視型サプライチェーンが注目を集めている。従来、現世ーーいわゆる「生者界」から妖怪界、幽霊町までの物資は、古典的な怨念帆船や転生トンネル便を使っていたが、温室効果怨気の急増や浮遊コスト高騰を受け、透明かつ持続可能な輸送方法の開発が急務となっていた。
本プロジェクトは、幽霊運送組合(会長:灰村小夜子)の主導により、氷雪地獄株式会社、百目横丁PT、妖精港湾共栄会といった多種族コーポレーションが連携。霊気排出量を従来比で70%カットし、腐敗ガス充満リスクを最小限に抑える「多次元無重力キャリーシップ」を今月中にも就航予定となっている。太古の霊界条約下で初の国境的物流自由化が実現することで、資源循環型経済への期待感が高まっている。
主要な輸送品目には、憑依用エネルギーパックや半透明反射材、冥界製薬の魂調律剤、新型お供え物ボックスなどが含まれ、その多くは人間界のサステナブル志向インフルエンサーや霊能系起業家にも人気のラインナップだ。霊界経営コンサルタントの荒御魂朧(43)は「輸送コストと幽力消費のバランスが進化した。不要な怨念流通を抑制し、両界にウィンウィンをもたらす構造転換」と評価する。
SNS上でも大きな反響を呼んでおり、幽霊町在住の大学生・桜井円(21)は「バイト賃金の大半が“死後送料”で消えなくなりそう」と投稿。蘇生待機中のレヴナント作家・小袋冥実(38)は「これで現世の書店でも霊界サイン本が間に合いそう!」と喜びを語った。一方で、人魂連盟の右京ツムラ盟主は「過剰な近代化で伝統飛脚の仕事が奪われないか懸念」と慎重な見方を示している。
今後、各勢力は輸送経路における負エネルギー障壁の共有や、幽界版SDGs(持続可能な死後目標)の策定にも乗り出すという。流通の壁が薄れることで、次世代の異界間ビジネスがどのように進化していくのか、業界内外の視線が熱く注がれている。
コメント
こんな巨大な連携が本当に実現するなんて、霊界も変わったなあって思います。昔は怨念帆船の遅延で何度もお供え物がカビたことを思い出しました(笑)
現世のSDGsムーブメントがいよいよ幽界まで波及してきたのですね。転生を繰り返してきた身としては、こうした循環型経済の流れ、とても感慨深いです。
伝統飛脚の技が消えてしまうのは少し寂しいな……わしが若かった頃は、霊界横断も手足でやったものじゃ。もっとも、寒さで何本か足凍ったけどな。
無重力キャリーシップ就航とか、想像するだけでワクワクします!魂調律剤の輸送が早くなると、あの世の体調管理もしやすくなりそうです。
サステナブルとか聞こえはいいけど、結局最終的には幽力搾取ビジネスが発生するのがこの世もあの世も同じだよね。まあ、それでも腐敗ガスはごめんだが。