妖怪森で始まる幽霊たちのプラ再生革命──異界初のグリーン自然保護区誕生

夜の深森で幽霊や妖怪が発光するプラスチックごみを回収している様子と、奥にほのかに光るエネルギー施設が見える写真。 持続可能性
三日月深森自然保護区で始まった幽界プラスチック再生の現場。

幽霊や妖怪たちが暮らす新月県・宵闇町の「三日月深森自然保護区」で、死後の世界初となる『リサイクルプラ・エネルギーループ』が実現した。再生されたプラスチックから発電、妖力変換までを一貫して行う持続可能な循環システムは、異界社会の環境意識に新風をもたらしている。

三日月深森自然保護区の管理責任者である九条縁(くじょう・えん、管理人・没後178年)は、「死後の世界ではモノが姿を変えると消えると思われがちですが、実際には幽霊生活のゴミ、特に浮遊プラスチックの漂着は年々深刻化してきました」と語る。幽霊や妖怪たちが会話やいたずらに使う“おばけグッズ”は多くがプラスチック幽体混合素材で作られており、破損品や不要品が湖や樹海に大量放置されていた。

今回、新たに導入されたのは、山猫妖怪・狭間クロウ技師(102歳没)の発案による独自の“エクトプラ再生炉”だ。これは、集めた幽界プラスチックを超低温の幽冷気で分解し、新たなエネルギー素子として再利用するもの。「森の守護樹《幽珀》をまたいで電力が自動転送されるので、妖怪たちの住居や仕事場の明かりも全てクリーン。人魂発電所の排出量も4割減になりました」とクロウ技師は誇る。

この試みの成功はSNS『幽界コミューン』でも大きく話題となっている。「ウチのカッパ息子(148歳)が川掃除で拾ったプラお盆も再利用されてる!環境にやさしい異界を子孫に」(水草ナギ・妖怪主婦(二世帯))、「昔は控えの間にゴミを溜めて取り憑いたもんだが…今は妖エネルギーとして循環してる。不思議な時代だ」(巻貝左京・幽霊書記官(没後212年))など、さまざまな声が投稿されている。

だが一方、保守派からは懸念の声も。「幽界の伝統的な“消失葬”で物を消す慣習が廃れるのではないか」と指摘するのは、妖怪人類大学の神影院墨之進教授(死霊史/170歳没)だ。「資源循環やグリーン技術は異界社会に必要ですが、消失そのものが慰霊の一環という意義も忘れないでほしい」。保護区運営が今後、伝統と革新のどちらへシフトするのかも注目される。

一連の動向を受けて、異界全体への導入機運も高まりつつある。すでに「朧渓温泉郷」や「黒羽原野」でも試験運用が始まった。三日月深森自然保護区の九条管理人は、「幽霊も妖怪も、かつて人だった責任感を持って、異界の環境をみんなで守っていきたい」と語る。持続可能な死後の世界、黎明のときが訪れた。

コメント

  1. プラ再生炉とは…正直驚きました。物が消えるだけだった頃から考えると、大きな進歩ですよね。これであの世がもっとクリーンになれば、次の転生にも気持ちよく向かえそうです。

  2. 亡くなってずいぶん経ちますが、昔は浮遊プラスチックの掃除で毎日手が冷たくなったものです。今の若い妖怪たちはエネルギーまで自給できるなんて、羨ましい限り!

  3. 伝統の消失葬が減るのは少し寂しいけど、それでも未来のことを考えれば、こういう流れも必要なのかもしれんね。幽界も時代の風が吹いてる。

  4. てっきりゴミは念力で無になるもんだと思ってたから、実際には残り続けるって聞いてびっくり。妖力変換できるなら、私の使い古した霊体傘も誰かの役に立つのかな。

  5. 三日月深森のプラ再生、うちの幽灯が前よりよく光るのはそのおかげだったのね。人魂頼みの時代が変わりつつあるの、ちょっとワクワクするにゃ。