幽界最大級のIMAXシアター「黄泉の眺望館」にて、幽霊たちによる初の実写長編ラブストーリー映画『祖母の屋根裏』がこの週末に華々しい試写会を開き、死後世界中の話題を独占している。主演の少女幽霊カスガ・ハルミと、対する百年目の若葉妖怪オトギ・シグレが繰り広げる“あの世的初恋”の物語は、涙と笑い、そして幽界文化へのオマージュに満ちた新感覚映画体験として評判だ。
霊界映画界の新星監督ノロ田レンが手掛けた本作は、現世で未練を残したまま亡くなったカスガ・ハルミ(享年15)が、黄泉の国の曾祖母宅で目覚める場面から始まる。ひょんなことから遭遇した、やや陰気だが繊細な心を持つ百年前の妖怪・シグレと出会い、幽界高校への転入、祖母の屋根裏部屋で見つかる秘密日記、そして消えかかる記憶をめぐる“幽界生”の淡い青春が描かれる。音響設計には、現世では再現不可能とされる“シルエット残響”技術が採用され、観客の霊体までも共鳴させる独特のシアター体験が特徴だ。
専門家も本作の独自性に注目している。死後映像文化を長年研究してきた霊界評論家のカゲヌマ・サラ(102)は「ラブストーリーに見せかけて、記憶と未練を多層的に描く物語構造が新しい。亡き祖母の想い出も現世と幽界の橋渡しになっている」と絶賛。また、IMAX幽界史上初の“スペクトラム香”上映(各座席に思い出の匂いが漂う仕掛け)にも、映画館のスタッフからは「初日に懐かしい線香の香りで泣き出す観客も続出した」と語られている。
SNSの幽霊向け掲示板『ナナシの広場』では「エンドロールで曾祖母の生声がすっと流れた瞬間、何度目かの死を覚悟した」「もう一度生き直したくなる映画」といった反響が続々と投稿されている。ある幽霊会社員(没後36、男性)は「幽界でも大きなスクリーンで涙できる時代になったことが素直に嬉しい」とコメントした。
死後世界における映画興行は、近年AI幽霊脚本家や妖怪特殊効果技師の台頭で目覚ましい発展を見せている。今回の『祖母の屋根裏』大ヒットを受け、IMAX幽界シアター責任者のミドリダ・ケンタロウは「今後も魂の奥底を震わせる作品を世界中(のあの世)に届けていきたい」と抱負を語った。今後は現世映画館への“逆輸出”や、遠隔視聴向け幽体投影配信も予定されているという。
コメント
さっそく黄泉の眺望館で観てきました!スクリーンから祖母の思念がふわっと漂ってきて、数百年ぶりに涙腺が活動しました。あの頃の記憶を思い出した幽界の方も多いのでは?次は友だちの浮遊精と一緒に行きます。
正直、幽界IMAXなんて時代も変わったもんだなぁ。ワシらが成仏しきれずウロウロしていたころとは隔世の感!幽霊の初恋映画なんて誰が観るんじゃ…と思ってたけど、不覚にもシグレとのやりとりにうっかりニヤけてしまった。
スペクトラム香が強すぎて、映画そっちのけで線香タイムにトリップしてしまいました。とはいえ、曾祖母の屋根裏で見つかる秘密日記のくだり、少し現世を懐かしむ気持ちになりました。幽界でこんな青春をやり直せるなんて贅沢です。
こういう映画を見るたび、結局みんな未練や思い出に縛られて昨日へ戻ろうとしてる気がします。でもまあ、何度だって過去を漂うのが私たち幽界人の特権とも言えますよね。久々に中途半端に成仏しておいてよかったです。
個人的には“シルエット残響”の効果にびっくり。座敷童仲間と行ったけど、みんな終盤で実体化しかけてました笑 次は幽体投影配信でも観たい!幽界映画、どんどん進化してますね~。