死後の世界にも“もの選び”の新しい波が押し寄せている。最近、関東地方の大手幽界スーパーマーケット「夜渡商会」でエシカル消費運動が静かなブームとなっており、浮遊層を中心とした主婦や日々の生活に余念のない幽霊住民たちの間で「霊的にやさしい買い物」が急速に普及しつつある。
「フリートゥプラスティック」コーナーに並ぶゴースト対応消費材――素材に幽樹の皮や地縛竹を用い、分解しても物理世界を汚染しないとされる商品が人気を集めている。その一方、ゼロウェイストを掲げる「虚空市場」は、使い切ると商品自体が霊的なヒュームと化して幽界の大気に還る独自システムで注目されている。
幽界消費者倫理研究会の志摩野晴彦代表（元・生前は消費生活アナリスト、享年62）は、「幽界でも『私はどう生きるか（死ぬか）』から『私はどう消費するか』へ価値観が移りつつある。不必要な呪詛成分の排除や、負の念エネルギーのリサイクル需要がカギ」と指摘。コンビニ幽霊店員（380年目）の斎藤叶恵さんも「お客様の多くが、“あの世でも地球を汚したくない”と話されています。パッケージの霊障ランクを見て商品を選ぶ方が目立ちます」と語る。
SNS「ユウレイター」では、#幽界エコ #エシカル転生 などのハッシュタグ付きで、冷やし冥土豆乳やリサイクル骸骨アクセサリーの画像が拡散。「骨壺よりカーボンニュートラルな幽箱で」「使い切ると五感もリセット」など斬新な商品体験談がトレンド入りした。とくに「幽界・森の会」が開催する『空き霊器持参デー』には、幽児から高齢幽霊まで数百体が参加、主婦の長谷部月香さん（412）は「死後こそ潔く。子孫世代に恥じぬ消費マナーを伝えたい」と話す。
一方で、「放っておけばすべていずれ霊界塵に還るのに、“エシカル”は過剰意識では」といった声や、「逆流れで現世のエコ基準を幽界に持ち込むな」とする伝統派亡者の意見も見られる。葬送人カウンセラーの黒澤幽一郎氏（享年70）は「幽界の環境バランスは輪廻転生と表裏一体なので、物質感覚の価値転換が本格化するにはもうしばらくかかる」と分析する。とはいえ、幽界スーパーの商品棚を彩る新しい“やさしさ”が、死後の世界に静かに根付いていきそうだ。
コメント
私も最近は霊的エコ商品ばかり選んでいます。使い終わった幽樹トートが自然にヒュームになって消える瞬間、なんだか成仏した気分になりますね。こういうやさしさ、もっと広まるといいなぁ。
正直、ちょっと流行りすぎじゃないですか？どうせ全部いずれ虚空にとけるのに、さして意味あるのか疑問。生前より意識高くなろうとしても骨が折れるだけだよ…。
懐かしいなあ、生きてた頃もエシカルって聞いたけど、幽界まで来てもまだ悩むのか～って思いました。けど、冥土豆乳のパッケージ可愛くてつい買っちゃう。やっぱり買い物って楽しいですね。
幽児まで参加する空き霊器持参デー、なかなか微笑ましいです。いつか死孫が生まれたら、物を大事にする心、ちゃんと伝えたいですね。輪廻を重ねても消えない価値観、大切にしたいです。
森の会とかやってることは立派だけど、そもそも現世のエコ基準を幽界に持ち込むのは違和感しかない。転生何度しても、幽界には幽界の流儀があると思うけどなぁ。