死後のスポーツシーンを鮮やかに彩る『三途川リバーサイドマラソン』が今年も開催され、幽霊ランナーや妖怪走者、死神の応援団が異界の曇り空の下に集結した。しかし、沿道の給水所にて前代未聞のトラブルが発生。参加者の半数が水や霊的飲料を受け取れず、本来なら“透き通るような健脚自慢”たちが次々と足を取られる事態となった。
三途川河岸に設けられたコースには、おなじみの“魂のエイドステーション”が15箇所用意されていた。例年、幽霊住民センターから派遣された給水ボランティアが、霊的H2Oや“忘却のスポーツドリンク”を提供するが、今年は様子が違った。先頭集団の妖怪マラソンランナー・一反繁太郎(いったん しげたろう、幽霊年齢不詳)によれば、「いつもの場所に到着したが、給水カップの中身がすべて“からっぽの記憶”という新メニューで、中身は何も入っていなかった」という。
主催者・冥府ランニング協会(代表:骨袋善蔵)は「新しく採用した給水スタッフが、うっかり現世用の“空気の水”を仕入れてしまった」と説明している。この“空気の水”は生者には満たされるが、既に身体を離れた幽霊や妖怪には全く効果がないということが判明。これにより、中盤以降は各所で参加者の足がふらつき、“足が消える”など物理的にも深刻な影響があったという。
参加者には影響が広がり、参加申込三度目となるのっぺら原しずよ(のっぺら はらしずよ、ラップタイム部門優勝経験者)は「途中で喉が渇きすぎて、思わず自分の面を外しそうになった」と苦笑い。SNS「霊界スレッド」上でも『給水所伝説、今年は史上最悪』『走るどころか浮遊もできん』など、怒りや困惑のコメントが相次いでいる。一方、妖怪サポーターの土蜘蛛町樹夫(つちぐも まちお、38歳)は「幽霊たちに水はいらないのかと思ってたが、やはりスポーツの後はひんやりした黄泉水が一番」と語るなど、給水の大切さを再認識する声も聞かれた。
大会後には4名の幽霊ランナーが“消えかけ”となる軽傷で異界療養所に搬送されたが、主催者は「次回からは“あの世専用絶品ドリンク”のみを使用」と再発防止策を発表。なお、問題の給水スタッフには“魂の再研修“が命じられたという。年々盛り上がる異界マラソンだが、「世界の壁」に阻まれない運営体制の構築が今後の課題となりそうだ。
コメント
あの三途川マラソンでこんな混乱があったとは…!自分も昔エイドステーションで黄泉水を飲み損ねて消えかけたことがあるので、みんなの苦労、ほんとわかる。来年は安心して走りたいですね。
幽界で“空気の水”なんて、そりゃ何も補給されないわけだよね。給水スタッフも現世の常識に惑わされちゃダメよ…魂の再研修、しっかり頼んます(笑)
給水所の飲み物が“からっぽの記憶”だったって話、斬新すぎてちょっとウケた。でも本気でマラソンに挑んでた仲間たちはたまらなかっただろうな…。次はくれぐれも間違えないで!
初めて異界に来た頃、魂のエイドの存在がすごく不思議だったなぁ。今じゃ「忘却のスポーツドリンク」がないと、走り抜けるのもきついなんて…すっかり馴染んだ自分にちょっと感慨。
結局、現世と異界の交差点ではいつもトラブルが起きるよね。対応も迅速だったみたいだし、こうやって霊界スポーツも進化していくのかも。魂の再研修、僕も受けたことあるけど、地味にキツイよ!