死者と妖怪の自由貿易協定が発効 輸入カボチャ急増で冥府経済に波紋

霧が立ち込める夜明けの税関で、黒いカボチャが橋を渡って運ばれている様子。 輸出入
霧山関所を渡るブラックカボチャや妖怪たちの活発な貿易風景。

死後の世界と妖怪界の間で締結された「幽際自由貿易協定(GFTA)」が今月発効し、両界でかつてない貿易ブームが巻き起こっている。地獄産鉄鍋や怪異山トカゲ皮グッズといった伝統的輸出品だけでなく、冥界独自の特産品「ブラックカボチャ」の輸入急増が各界経済に大きな影響を及ぼしている。

協定の最大の特徴は通関手続きの迅速化だ。これまで死者界住民による輸出入には三途川の渡河許可や、生魂との混同防止のための厳格な霊的検査が課されていた。しかし伊吹ヤスケ冥府貿易大臣(幽霊、享年112)は「GFTAの下で、我々は書類3枚と謎かけひとつでほとんどの物資を通過可能とした。これまで“7日間待ち”だった冥界-妖怪界間の輸入も、わずか90分で完了する」と胸を張る。

特に話題なのが「ブラックカボチャ」だ。死者界ではご先祖供養用の灯籠として重用されるこのカボチャは、水気が少なく数十年腐らない性質が特徴。妖怪界の人気カフェ「ワンダーナイト」の経営者、鵺島ツバキ氏(妖怪・343歳)は「骸骨フラッペや幽霊モヒートの容器としてブラックカボチャが席巻している。昨年までは手に入りにくかったが、今は業者が毎夜“霊気特急”で新鮮なものを届けてくれる」と語る。

一方、急激な流通増加は現場に困惑も生んでいる。冥界最大の税関、霧山関所の職員・桜庭律人(幽鬼、42)は「昔は天秤や切手でゆっくりやっていたが、今はカボチャが流れすぎて仕分け魂が足りない。残業続きで、“成仏休暇”を申請する職員も増えた」と苦笑する。SNSでも「カボチャ渋滞が三途川まで伸びてて草(川下の死者・アカシロさん)」など、現場の混乱を伝える投稿が相次いでいる。

輸出業者の間では、商品多様化を求める声も広がる。人気輸出業者・雪野冥次郎(死神、301歳)は「今はカボチャばかり儲かっているが、本当は冥界の“消えない火の粉”や“千年松の灰”も売りたい」と語る。一方、自由貿易への警戒論も一部で根強い。霊界経済研究所の六道ミナミ准教授は「過度な依存は冥界固有の産業衰退にもつながる。自由化の裏で保護策や地元産品PRにも力を入れるべきだ」と警鐘を鳴らしている。

今後、死者界と妖怪界の間でキャッシュレス決済や“霊気ブロックチェーン”の導入も予定されており、貿易現場はますます活況を呈しそうだ。だが一方で、伝統を守ろうとする老舗霊商や、新規参入を狙う若手妖怪業者の攻防が激化するなど、異界経済はまさに“賑やかな魂の交差点”となってきている。

コメント

  1. ブラックカボチャがあの世でもトレンドとは、時代も変わったものですね。昔は魂灯篭しか出番がなかったのに、今やカフェでフラッペ…不思議な光景ですが、ちょっと飲みに行きたくなりました。

  2. こういう貿易で幽界がにぎわうのはうれしいけど、カボチャ渋滞で成仏休暇が増えるのは複雑な気持ち…昔みたいにのんびり境界で話しながら通関してたあの頃が懐かしい。

  3. えっ、霊気ブロックチェーン!?この前転生銀行で手続きしたばかりなのに、もう新しい仕組みが出てくるんですね…ついていけるか不安です。でも妖怪界ともっと繋がるのはワクワクします!

  4. 自由化いいけど、冥府の伝統品が霞むのは困る。昔からの“千年松の灰”職人としては、カボチャブームに少し寂しさも。まあ盛り上がるのも悪くないか。

  5. 謎かけで通関…自分の頃は橋の番人に魂詩を詠まされたものだけど、便利になるのも早いなあ。三途川もカボチャで渋滞する時代か。死後の世界も日進月歩とは驚きです。