霊体クライマーたちが渋谷の夜を駆ける――都市型壁登り大会・初開催レポート

夜の渋谷高層ビルの壁面を霧に包まれながら登る幽霊たちのリアルな写真風イメージ。 アーバンクライミング
深夜の渋谷で開催された異界クライミング大会の様子。

深夜の渋谷高層街区で、前代未聞のアーバンクライミング大会が開催された。主催者は異界アスリート協会。参加者は全員、物理法則を部分的に無視できる霊や妖怪たち。現世の眺望と異界の迫力が交錯する垂直レースの模様を取材した。

今回の大会は「シブヤ・ゴーストウォール・チャレンジ」と題され、エントリー資格は“人間だった頃、未練の一つが高い所へのあこがれ”を持つ幽霊や未練型妖怪たち最大50名。最も高く、最も印象深いゴールを目指し、参加者たちは渋谷スクランブルタワーの壁面を目指して駆け登った。ロープは現世産の工業用ではなく、蜘蛛の糸や魂結びの紐など、独自のクライミングギアが勢揃い。物理干渉が限定的な霊体でも難しい“摩擦ベタ付けゾーン”は難所として有名だ。

開幕と同時に、百夜ハツネ(無職幽霊・享年22)が一気に15階まで疾走。6本指の妖怪クライマー、爬行宮ゴンゾウ(山籠り職・83歳没)は、特製“幻覚ロープ”を活用し、壁そのものを幻視化して楽々登攀。主催者の蒼野ユウジ(異界アスリート協会理事)は「幽霊と言っても何でも通り抜けられる訳ではありません。固体と意志力のせめぎ合いがこの競技の神髄」と語った。

会場には霊感を持つ現世住民の観戦者も多数集まり、SNSでも「渋谷の壁に白い影が踊る夜」「魂のアドレナリン半端ない」といった投稿が散見されている。実況を担当した伝説の河童アナリスト・芦屋カゲミチ(解説歴42年)は「霊体は軽やかだが、心理的リスクは物質クライマーのそれ以上。ひとたび高みへの未練が蘇ると、昇天リタイヤする選手も。精神性が勝負を分ける」とコメント。

最終的には、百夜ハツネが24分32秒でフィニッシュし優勝。だが、「途中の広告看板にかつての恋人の顔写真があり、危うく成仏するところだった」と振り返るなど、死後のクライミングならではのリスクも報告された。来年も異界各地から新たな高所志向の強者が集う見通しだという。冒険心が止まない者たちの、新たな死後競技として注目される大会となった。

コメント

  1. おお、懐かしいなあ。ワシも生きてた頃は高いビルからの眺めに憧れたもんじゃ。今度こそ参加してみたくなったぞ…幻覚ロープ、昔は無かった道具だなぁ。時代は変わるもんよ。

  2. ハツネさん優勝おめでとうございます!でもあの世でも広告看板に未練引きずるなんて…成仏リスクがある大会、スリル満点だし、幽界らしいですね~。私も応援に行きたいです。

  3. 正直、霊だと壁なんて楽勝かと思ってたけど、『摩擦ベタ付けゾーン』はさすが異界競技って感じ。昇天リタイヤとか、命がけじゃなく魂がけ…いや、おつかれさまです!

  4. え、現世の人にも見えちゃってるの?うっかりSNSでバズったら現界秩序乱れるんじゃ…来年は妖怪限定観戦にした方が安全かもよ。

  5. こういう大会あると、死後の暮らしも捨てたもんじゃないなって思えるね。生きてた頃にやれなかったこと、もっと増やしてほしい。摩擦地獄は勘弁だけど、魂結びギア試してみたい!