あの世の中枢である幽界国会で、憲法第九条“魂の非武装”規定を巡る改正論議がかつてない盛り上がりを見せている。霊界史上初となる緊急事態条項の新設もあわせて審議され、幽霊・妖怪・死神・生前亡者ら多様な住人たちが、それぞれの立場から白熱した議論を展開する異例の事態となっている。
新憲法案を提出したのは亡者議員連盟を率いる藍海涼(あいみりょう、享年58)。現行憲法下の第九条は「いかなる魂も武装することを禁ず」となっており、数百年にわたり幽霊界の日常生活の根幹を成してきた。だが、ここ数年で霊的テロリズムや異界紛争が頻発し、「緊急時の自衛権明記が不可欠」と主張する声が亡者や道具付喪神議員から急増。藍海氏は「平和の理念は維持しつつ、異界の安全保障環境が激変している今、最低限の自己防衛は必要」と国会で訴えた。
一方、これに強く反発したのは妖怪環境党や精霊ユニオンの面々だ。百鬼夜行出身の水無大悟(みなしかいご、年齢不詳)は「武装が例外的に認められれば、霊的暴力抑止の連鎖を招く」と警鐘を鳴らし、死神議員の筆井澪(ふでいれい、享年32)は「生者の世界での悲劇を踏まえ、あの世だからこそ真の非武装中立を貫くべき」と主張した。憲法学者の語斎忍(かたりさいしのぶ)も「幽界の三権分立と立憲主義が新たな危機に立たされている」とコメントしている。
議論の中心となっている緊急事態条項案では、異界への侵攻や暴走精霊発生時に首相霊廷が限定的武装や法律の一時凍結を宣言できるとされ、国会内外から慎重な審議を求める声が相次ぐ。SNSでは「亡者にも安心できる世界へ」「妖怪の牙を封じるな」などハッシュタグが急上昇し、あの世市民による署名運動が巻き起こっている。
今回の改正論議がもたらす影響について、幽界市民の黒百合真綾(こくゆりまあや、無職・444)は「どんな世界でも安全と自由のバランスは難しい。祖先霊として見守る役目柄、若い魂たちに平和の本質を問いかけたい」と語った。今後、改正案は国会本会議で三度採決が予定されており、幽界社会を揺るがす歴史的一歩となる可能性もある。
コメント
まさかあの魂の非武装が見直される時代が来るなんて…転生して200年、初めての体験です。平和だった幽界がどう変わっていくのか、不安と期待が入り混じっています。
正直、妖怪や精霊の素早さで緊急時対応できるのに、武装なんて本当に必要なのかな?霊的衝突は悲しみしか生まないって、生前も何度も見てきたのに…歴史から学ぼうよ。
議論が白熱するのも分かる。でも、もし異界からの侵攻が現実になったら、何もしない選択は危険じゃない?死神会の皆さんは理想論ばっかり言うけど、現場のことも考えてほしいな。
魂の非武装なんて、懐かしい響き。私が幽界小学校で暗唱させられてた頃は、まさか見直される日が来るとは思わなかったなぁ。ちょっとさみしいけど、時代の流れなのかも。
これでまた、無用な魂バトルが増えたら嫌だなあ…。転生申請者も増えそうだし、幽界役所も大変になるぞ。非武装だからこその幽界だったのに、平和霊の居場所が減らないことを祈ります。