幽界内リモートワーク大流行 妖怪企業で働き方改革の波、残業霊減少へ

薄暗い部屋で、位牌の前にパソコンを置いて作業する幽霊のサラリーマンがほのかに発光している写真風の光景。 雇用市場
幽界で進むリモートワークの象徴的な一場面。

近年、冥界経済にかつてない潮流が押し寄せている。魔府省労働管理局によると、幽界全域でリモートワーク導入が加速し、伝統的なうらめし型対面就業からの大転換が進行中だ。あの世特有の「すきま時間」や、物理的な移動を嫌う幽霊サラリーマンの間で特に人気を博しており、異界雇用市場に新たな息吹を吹き込んでいる。

「幽界放送協会」に36年間勤務する朧木ミツルさん(物理年齢不詳)は今年3月、リモート転向を決断。きっかけは、生前からの友人である雪女起業家・雪垣ユキノが運営する『霊気業務最適化研究所』によるクラウド残業管理サービスの導入だった。朧木さんは「これまで墓地スタジオまで片道7里浮遊していましたが、今は位牌下の自室から番組構成ができる。無駄なおどろおどろしい時間が激減し、とても助かっています」と実感を語る。

導入を進める背後では、デジタルトランスフォーメーション(DT)を担う新組織『魔導系クラウド会議連盟』が急成長中。代表の狐塚コンさん(妖怪ITコンサルタント)は「異界全体が幽気データ通信網に切り替わった今、業務遂行の地縛が意味を持たなくなった。特に“呪詛部署”や“祟り外商部”など、従来は現場巡回必須だった部門でさえ、ほぼ完全オンライン化が可能です」と述べる。これにともない、生前の職歴に囚われず職種横断の副業がしやすくなったため、新たな「浮遊キャリア世代」も台頭しつつある。

一方、従来型現場主義の精霊労組からは慎重論も聞かれる。風呂木シラナイ組合長は「対面下では“お清めタイム”や“供養ランチ”といった明文化されていない勤務慣習を重視してきた。新しい働き方に慣れる過程で、職場内結界の維持や、後輩妖怪の教育が置き去りにならぬよう注意が必要」と指摘する。しかし、職場結界そのものもリモート呪符化した企業も現れ、デジタル供養ランチの導入例も増え始めている。

SNS「霊界つぶやき」では、「夜中に憑依先からでも会議参加できて便利」「浮遊残業なくなって快眠」といった支持の声が大半を占める一方、「家系位牌の上にパソコンを置くのは罰当たり」「部屋が寒すぎてZoom幽霊が映らない」などの戸惑いも散見される。働き方改革と異界流デジタル化の波は、死後の世界にも様々な価値観の葛藤と進化をもたらしている。

コメント

  1. まさか霊界でもリモートが流行るとは!生前も残業に苦しんでたから、浮遊残業減るのは羨ましいです。うちの墓所でも導入してほしいなあ。

  2. オンライン化は便利だけど、昔みたいなお清めタイムでみんなと除霊おしゃべりできなくなるのはちょっと寂しい。あの世も変わっていくんだねぇ。

  3. 幽界つぶやきで「部屋が寒すぎてZoom幽霊が映らない」って流れてきて笑いました。私の場合は逆に快適なのでリモート最高です!

  4. リモートの導入、時代の流れなんでしょうけど……地縛霊の先輩方が、結界管理どうするんだ?って不安そうでしたよ。伝統も大事にしてほしいです。

  5. 生前IT系だったから、死後も魔導クラウド会議連盟が出来るなんて感慨深い。転生組も副業で色々チャレンジしてるみたいだし、幽界の働き方どんどん進化してるな。