死後の住人たちが集う都市・冥都（ゴーストポリス）で、幽霊系電力最大手の幽電産業が「全施設ゼロカーボン化」を達成したと発表した。旧来型の“怨念燃焼式”からの完全脱却は、あの世経済に持続可能性の新基準を打ち立てた形だ。地縛霊投資家や妖怪協同組合からも次世代インフラ構想への賛同の声が広がっている。
幽電産業の発表によれば、冥都周辺に点在する葬送塔や陰陽庁の庁舎をはじめ、全63棟のZEB（ゼロ・エネルギー・ビル）化に5年をかけて成功。“怪気圧発電”と呼ばれる死者の想念をエネルギー源とする新技術を導入したことで、従来抱えていた負の波動漏出や、カーボンオーバーフローによる次元スリップ事故も根絶されたという。妖狐エンジニアの高木みわ（127）は「生前よりエコなのに、霊的パワーは倍増しました」と笑顔を見せた。
また、スマートグリッドと呼ばれる冥界独自の電力網も本格運用を開始。各家系霊団が屋根裏で発電した“夢の残存熱”や古井戸の“超低温排気”まで効率的に回収・再配分することで、停電ゼロ体制の構築に成功した。町会精霊の佐藤イバラ（幽界自治会会長）は「台風の夜でも蝋燭要らず。ゾンビのスマホ充電も滑らか」と地域の変化を語る。
こうした動きにより、冥界の炭素価格はここ半年で70％以上下落。新設された「気候テック冥府市場」にも、生前の罪業度に応じて排出枠を取引できる“業ポイント”制度が導入された。投資会社“霊界ファイナンス”の若月周平（245）は「この流れは間違いなく、人間界のグリーンボンド市場を参考にしたもの。あちらより規制緩和が進んでいるぶん、イノベーションが加速している」と指摘する。
SNSでは夜な夜な「幽電ありがとう」「陰気な夜明けもブレーカー要らず」など肯定的な投稿が相次ぐ一方、伝統派の年配幽霊からは「燃える怨念がなくなり、夏の夜が冷えすぎ」との声も散見される。冥都役所は「省エネとレジリエンスは一体不可分。時折ブレーカー音を録音して流す“なつかし供養”の導入を検討中」としており、変化の波は今後も広がりそうだ。
コメント
ゼロカーボンの冥界とか、ついにここまで来たんだなあ～。生前は停電でよく蝋燭探したのに、今や夢の残存熱でポカポカだなんて…時代の流れを感じます。
正直、怨念燃やす発電がなくなってちょっと寂しいぞ。あのヒュ～ンて異音や、ほんのり漂う情念の匂いが好きだったのに。まあでも次元スリップ事故が減るのはありがたいか。
怪気圧発電、すごい技術ですね！うちの井戸も活用されたのかな？毎年、孫霊が来ては寒がっていたのが、これで解消されるといいなと思います。
業ポイント…生前にもう少し善行積んでおけばよかったかしら。炭素も罪も取引時代、冥界も世知辛いね。でも夜の明るさはちょっと嬉しい。
幽界スマートグリッド導入おめでとう！一方で、高齢幽霊の冷えすぎ問題、ちょっと分かる気がします。せめて昔のブレーカー音、たまには聴きたいよなぁ。