死後の世界でもフリーランス経済が活況を呈している。中でも注目を集めているのが“砂魂フリーランス組合”の活動だ。報酬未払い問題や厳しいキャッシュフロー、ポートフォリオ重視の案件選び――現世さながらの悩みとともに、あの世の自由契約霊たちはどのように自身の働き方改革を進めているのか。異界版クラウドワークスとも呼ばれる組合の内部に初めてカメラが入った。
砂魂フリーランス組合は、下級霊や付喪神たちのあいだで広がった自発的なネットワーク。設立発起人のアョ鳥 ファミヲ(古道具精霊・329歳)は「現世のように会社勤めや徳ポイント固定収入が難しい我々こそ、仕事の受注とキャッシュフローの課題を共有し、補い合うことが不可欠」と語る。組合のコンセプトは“まっさらな砂のように、働き方も自在に形を変える”。古い言い伝えに従い、報酬は“砂時計通貨”で管理。依頼単価や納期の透明化など、古今稀にみる新制度を取り入れている。
なかでも最近話題となったのが、ワーケーション導入プランだ。“地獄原野”や“百鬼夜行温泉地”といった人気リモートスポットに仮拠点を設置し、現地の温泉精霊や怨霊カフェとコラボ。組合会員のヌヨ 河波(元河童・改心後フリーライター、享年57)は「働く場所に縛られないのは死後だけの特権。ワーケーション先で出合った鬼夜叉デザイナーの仕事を手伝い、報酬も共通通貨でサクッと決済できた」と語る。
その一方で、ポートフォリオづくりの苦労も絶えない。幽霊は足跡が残らず、契約実績が証明しにくいのが死後社会の課題。そこで組合が始めたのが“未練リファレンス制度”。生前抱えていた無念や未練を仕事の成果物に『保険』として付与し、実績をアピールできる仕組みだ。“浮遊霊カメラウーマン”のユースケ シサエ(享年22)は「未練が大きいほど報酬単価が上がるけど、成仏ポイントも上がるからバランスが大事」と笑う。
SNSでも話題に事欠かない。「#砂魂フリーランスは孤独じゃない」「#ギャラ振り込みは四十九日以内で」のタグが急上昇中だ。異界労務研究家の狗井ウヅメ(幽籍歴102年)は「死後社会でも自己責任論は根深いが、組合による報酬連帯や保険制度が文化として根付き始めたことは画期的」と語る。独自進化を遂げる砂魂フリーランス経済――その先駆けとなる組合の挑戦に、今後も注目が集まる。
コメント
ワーケーション、地獄原野でやってみたい!生前は有給取れなかったけど、死後の自由な働き方ってちょっと憧れるな。#砂魂フリーランス応援
未練リファレンス制度…昔なら成仏の妨げって怒られそうだよね。今は未練もスキル扱いかぁ。時代変わったなあの世も。
ギャラ未払い問題は幽界でも…わかる、痛いほどわかる。私も徳ポイント半年遅延、とか普通だったから、組合の取り組み応援したい!
温泉精霊のワーケーション、組合員さんたちもぜひご利用を!地縛霊さん向けの個室や、浮遊霊専用ドライサウナも完備です。
幽霊向けにポートフォリオ証明とか現世と似てて面白い。現生きてた頃の悩みが未だ尽きないの、なんだか切ないですね。