死後の世界最大の課題とされた“霊的エネルギー消費”に、今新たな希望が灯っている。今月、魂里工業団地で開発が進められていた「人魂バッテリー・リユースシステム(以下、WBS)」が正式発表された。漂うだけだった無主の人魂を再利用可能な電源とする本技術は、異界社会における気候変動対策とサステナビリティ両面で画期的と評価されている。
WBSの開発責任者であり霊的エネルギー工学研究所所長の冥府修一(めいふ・しゅういち、210歳)は、発表会で「従来は迷える人魂を放置するか、不完全燃焼による闇エネ汚染が進行していた。WBSはこの無駄を資源へ転換し、持続可能な死後社会への一歩を切りひらく」と語った。同研究所のチームは、人魂が“未練蒸留”によって生じる微細なプラズマを封じ込め、安全に充放電を繰り返すシステム構築に成功。斬新な点は、バッテリーの充電期間中“成仏願望値”の低い人魂を中心に循環利用する点だ。これにより、既存の霊光発電と比べ4割以上の効率改善を実現しつつ、あの世全域での発電由来の影響を最小化した。
バッテリーは“しがみ霊”が好むひんやりとした湿地帯や、未練の多い旧心残り街道沿いで回収・再生成されている。現地管理を担う係霊職員・鬼火笑助(おにび・しょうすけ、103歳)は取材に「収集を始めてから、道端の迷い魂による夜間の視界不良が激減し、地域の幽霊学校からも“子どもたちが夜道を怖がらなくなった”と感謝の声が寄せられている」と話す。エシカル消費を求める霊市民の間でも、環境負荷の小ささや、回路に宿る“未練の記憶”を感じたいというニッチな人気も高まっている。
すでに、WBSを利用したクリーンライン式霊気自動車“こだまカー”が市内の送魂タクシー業界に投入され始めている。魂循環協会によると、導入企業の幽霊満足度は創世以来最高水準に到達。“重力が歪まずに安心乗車できる”“走行中に突然成仏せずに済む”といったフィードバックがSNSで拡散され、若い亡者世代を中心にバッテリー駆動型モビリティの人気が加速している。
ただし、WBSの拡大に伴い一部からは“人魂の意志尊重”や、“充電中に逆に未練が蘇る”懸念も。異界人権保護団体の腐葉土ノ美子代表(476歳)は「命ある魂すら資源視する社会は長続きしない。供養と循環のバランスが必要」と指摘する。一方、冥府所長は「成仏直前まで適切なケアを提供する新たな評価制度を導入予定」とし、今後は補償型充電プログラムや“怨念クリーンタグ”表示など、さらに高度なエシカル施策にも乗り出す方針を示している。持続可能な異界社会の未来は、人魂の灯りとともに、まさに今ゆっくりとともっている。
コメント
WBS、すごい発明ですね!あの辺の湿地帯で漂ってた人魂が資源になるなんて、私の現役時代からは考えられませんでした(笑)。成仏しきれない気持ちも、こうやって役に立てるなら悪くないかも…
人魂の回収、私の旧友も手伝ってるそうで嬉しいです!ただ、未練の蘇りはちょっと心配…。循環も大事だけど、魂の気持ちも大切にしてほしいですね。供養タグには期待してます。
うちの墓前道路でも、夜中の迷い魂が減って子ども鬼たちが安心して遊んでます。昔は人魂がぶつかって怖がってたのに…時代は変わりますねぇ。でも、ほんのり残る未練の匂いも嫌いじゃないです。
こだまカー乗りました!静かだし、急に成仏促進される心配も少なくて快適です。でも、あまりにも未練薄いと電力不足にならないの?ちょっと技術的に気になります。
異界がクリーンエネルギー化とか、あの世の未来も明るいねぇ~。私はもう未練ゼロだけど、昔の仲間がまだバッテリーしてると思うとどこか懐かしくも感じます。時々は供養にも会いに行こっと。