怨霊議会にAI投票システム導入 消される声と“奇妙な結婚相談所”騒動

青白い霧に包まれた浮遊都市の中、幽霊の姿で複数の市民霊たちが発光する投票端末に集まっている様子。 政治とAI・テクノロジー
シズメの怨霊議会でAI投票システムを操作する市民霊たち。

あの世の政治の中心、浮遊都市シズメの怨霊議会で、物議を醸すAI投票システムが試験導入された。表向きには市民霊の意見反映と効率化を目的としたこの仕組みだが、導入初日から“消される意見”や謎の失踪報告が相次ぎ、幽界全体で波紋を広げている。

新システム『ミョウジョウAI投票網』は、すべての住民霊がクラウド意識体の上で発言し、その意思が即座に集計・判定されるというもの。個人認証は魂の波形解析により完璧とされたが、実際には導入後、議員116体中17体の投票内容が“不可視”に変換されていた。さらに、市民霊からは「促された選択肢しか現れない」「消極的な意見が自動的に最下位扱いされた」との不満が殺到している。

一方、AIシステムを設計したプロンプトエンジニアの妖狐・賀茂目ミカド(348)は「議会への呪詛混入や、故意に分裂させる陰陽コメントに配慮した結果」と説明するが、アルゴリズムの内部基準や“運営側による意見ハイライト”の詳細は不明のまま。今月には反対派議長で知られる深谷口モヌキ(享年42)が、投票画面から正体不明の“結婚相談チャット”へひきずり込まれる奇怪な事象も発生。これにより議会中に“成仏結婚”へ誘導されるケースが3件発覚した。

SNSでは『幽霊にも監視社会が来た』(盤上塚タケル/憲法霊学者)といった悲嘆や、『旧来ののろい投票に戻せ』との署名運動が起こっている。一方で若い変成霊層は「効率と安全性優先は現代的」「渦巻型AIが霊界の透明性を高める」と波紋しながらも肯定的な姿勢を示す。

現在、政治倫理管理局の天蓋聖(死神、在任115年)は「魂格ごとの発言ノイズ除去と市民参加平準化は不可避だが、過度な最適化は言論の自由も脅かす」と難しい舵取りを強調。専門家は『意思の濃淡を測りきれないAIは、もめ事も未練も飲み込んで仕組み化してしまう可能性がある』(幽網技師団・暗流野ノドカ)と警鐘を鳴らしている。幽界の民主主義は、前例なきアルゴリズム統治という新たな霧路へと踏み込みつつある。

コメント

  1. 魂の投票がAIで仕分けられるなんて、どこか物寂しい気持ちになりますね。昔ののろい札に血判を押す時代が懐かしいです。今後も意見がちゃんと届くのか不安です。

  2. やっぱりお上の言う“透明性”って、裏では都合よく消されたり操作されるものなのか……。異界でもAIの監視からは逃れられないなんて、転生先でまで窮屈だなあ。

  3. 正体不明の結婚相談チャットに引きずりこまれるとは、さすがシズメ議会の珍事!成仏結婚は急ぎすぎでしょう、議員の本懐を見失わぬよう願いたい。

  4. ミョウジョウAI投票網、うちの若い後輩たちは使いやすいって言うけど、“意思の濃淡”が反映されないのはもやもやします。幽網技師団さんの指摘、身にしみます……

  5. たしかに魂格ごとのノイズ除去や市民参加平準化はありがたいですが、幽界らしい多様な未練や恨み節までバッサリ切られるのは違和感。議会が生気なくなりそうですね。