死後の世界で深化する“推し活”文化。その最新スポットとして、幽霊や妖怪たちが自らの趣味と愛をぶつけ合う「推し活カフェ・あの世店」が空前の賑わいを見せている。現世アイドルや著名幽霊インフルエンサー、さらには精霊VTuberへの“痛バッグ”持参やSNS応援が日常風景となりつつある。今年、幽霊界にも押し寄せる応援活動ブームとその裏に潜む摩擦とは――。
「推しの最新アクリルキーホルダー、どうしても飾りきれなくて3段痛バにしちゃいました」。そう語るのは、350年目を迎える茶碗幽霊・薄井輪三(うすい・わさん、享年28)。彼の通う推し活カフェ・あの世店は、霊界四丁目バス停から徒歩1分の好立地。店内には“現世アイドル タマコ・オバケ応援セット”などが並び、各席ではキラキラ痛バッグを抱えた幽霊たちが静かに推し語りに花を咲かせている。輪三が“推し”ているのは現世の地下アイドル「影桜るり」。現世を見守る鏡写しスペースでライブ生配信を視聴し、仲間と一緒に亡霊界SNS「シナト」で応援メッセージを拡散するという。
推し活熱が高まる一方で、幽霊界ならではのトラブルも発生している。水死霊の御崎そよ子(みさき・そよこ、享年16)は「推し活カフェの人気テーブルを取るために透明化でズルをしてしまった。今はもう反省しています」と告白。彼女は毎朝3時から並び始めていたが、SNSグループで波紋が広がり、カフェ店主・鬼蔦千歳(おにつた・ちとせ、年齢不詳)によって“幻像整理券制”が導入される事態となった。さらに、幽霊界専用SNS「シナト」では推し炎上用語「ゴースト拡散」や“あの世マナールール”など新語も次々登場。死後数百年を経た高齢霊と、現世に近い感覚を持つ若い幽霊の間で、応援手法や痛バッグの装飾を巡る世代対立もちらほら見られる。
独特な推し活グッズも話題だ。付喪神の小道具職人・初山百々(はつやま・もも、享年45)は、あの世限定デザインの“呪符アクリルチャーム”を考案。憑依力が高まると評判で、「おかげで推しのアイドルが夢に出てきてくれた」という声がSNSを賑わせた。一方、妖怪MIXのSNSフォロワー、猫又の月桂院しぐれ(22)は「現世っぽい推し活ができること自体が、供養とは別の生きがいになる」と言う。現世と霊界の壁を越えたファンレター配達サービスや、推しキャラと同じ墓前に“推し活弁当”を供える新しい習慣も急増中だ。
専門家は、幽霊・妖怪たちの推し活が“成仏ストレス”を和らげ、死後社会の活力向上につながると指摘する。冥界文化研究者の須川音松(すがわ・おんまつ、享年81)は「供養の一方構造から、相互応援の文化へ転換する兆し」と語る。一方で、急拡大する痛バッグ市場とそのゴミ処理問題、応援過熱による“幽霊オタク疲労”も課題に。みずみずしい人生(あるいは死後)をかけた幽霊たちの“推し活”は、これからも異界のライフスタイルを大きく変えていきそうだ。
コメント
推し活カフェ、こんなに盛り上がってるとは知らなかった!成仏前も推し追ってたけど、あの世で推し語りできる仲間が増えて嬉しいです。痛バ3段重ね、私も挑戦してみようかな…。
透明化して席取りはちょっとズルいね。でも整理券制になって、みんな平等になって良かったと思うよ。幽界マナー、大事にしたい。推しへの愛はみんな同じだからね。
痛バッグ…懐かしい響きだ。ワシらの時代は位牌コレクションが主流だったのに、今どきの若い霊はオシャレで感心しとる。新グッズ、儂も孫霊のために作ってやろうかのう。
推し活でストレスが和らぐの、すごく共感する!私も現世のバンドマンのライブ霊視しながら成仏できずにいるから、みんな同じだなって安心した。ゴースト拡散にはほどほどがおすすめです。
供養や成仏だけじゃなく、推し活が生きがいになる時代か…なんだか眩しい。でも、墓前で推し活弁当って、ちょっと現世と混ざりすぎてて涙で霜柱になりそう。