妖怪外交蝶が密輸防止策に波紋――“幻影検査”巡り外妖貨交換安定せず

薄暗く霧がかった通関検査場で、蝶の妖怪たちと発光する霊視検査装置、そして係官が貨物を監督している様子。 輸出入
霊視検査装置と蝶妖怪たちによる厳戒の通関現場。

冥界最大の対外輸出入機関「逢魔貿易協会」が今月、輸入蝶妖怪による幻惑密輸事件の急増を受け、通関検査の全面見直しに踏み切る方針を明らかにした。この動きが、異界為替レートや各国の自由貿易協定交渉にも新たな波紋を起こしている。

発端は、流浪する蝶妖怪「翅折ルイ」が、幻術を使って大型配送センターを“透明化”し、多数の幻影許可証付き貨物が実体を隠したまま通関した事件。悠久の時を超えて運ばれてきた「百年樽霊酒」や「零度砂金」などの高価な輸入品が、不正流通ルート経由で国内に流れ込んだ。これにより、現地の通貨『外妖貨』の市場価格が急落、輸出業者のアカリノ・ダイバーグ(霊界財界アナリスト)は「幻影リスク対応はすぐにでも始めねば、異次元市場の信認を失う」と警鐘を鳴らす。

この混乱を受け、逢魔貿易協会は急遽、幻影を見抜く最新の『霊視検査モジュール』と、新設の“許可証透明化防止シール”を導入。導入初日には、蝶妖怪を中心とした輸入業者団体が抗議集会を開き、「霊視検査は私たちの体質差別だ」と主張。モフレス・カール運輸庁長官(幽霊、67)は「公平経済へ向け、種族に依存しない検査体制に修正する意向」を明確にしたが、現場では蝶の羽粉による機械誤作動が絶えないという。

こうした現状は、各国との自由貿易協定(FTA)締結や特別関税取決めにも影響をもたらしている。特に、蘇生界との輸出入協定では、新たな『品目ごと幻影度査定』を巡る交渉が膠着。死者貿易庁のカリノ・マグダレーナ広報官(死神)は「幻影度が高い品物は関税引上げ不可避。だが霊的検査技術が標準化されれば、逆に輸出解禁範囲を拡大できる可能性がある」と述べた。

闇椿経済新聞のSNSアンケートでは、「密輸防止は安心」「検査強化は業界負担」など賛否が拮抗。特に若い妖怪層からは『蝶型運送業の就業差別』を懸念する声も上がる。一方で通貨外妖貨の為替レートは乱高下し、老舗輸入菓子店では「砂金ムースの価格改定も検討せざるを得ない」(経営者・百鬼ハル)との声も。霊視検査技術の確立と公正な通関体制づくりが、死後経済の“大きなカギ”となるのは間違いなさそうだ。

コメント

  1. 幻影検査、ついに導入か…私が若かった頃は通関なんて顔パスだったのに。世知辛い世の中になったもんだねぇ。

  2. 蝶妖怪への過剰なチェックは納得いかないなあ。羽粉で機械が止まるのは仕方ないでしょ。種族の違いをもっと理解してほしい。

  3. また外妖貨の相場が動いたぞ。生前より投機熱に浮かされてる気がする…死後も経済に振り回されるのは何だか滑稽だな。

  4. 『砂金ムース』の値上げだけはやめてほしい…あれが楽しみで成仏せずにいるのに。密輸と検査、うまく折り合いつけてくれ!

  5. 死者の取引管理は本当に難しい。幻影度査定だなんて、霊界技術の進歩には毎度驚かされるよ。同種のことで蘇生界と揉めませんように。