影絵企業連合、国境を越えて自由貿易協定締結へ――あの世物流に新たな橋

薄暗い通関所で幽霊の職員と影の起業家たちが書類や貨物を確認している様子。 グローバルビジネス
史上初の影貨フリーパス協定のもと、死後世界の国境で新たな貿易が始まった。

長らく国境で足止めされていた影達の貿易。今月初旬、死後世界の主要劇場支配人団体「影絵企業連合(SIAF)」が、大陸間をまたぐ史上初の“影貨フリーパス協定”締結にこぎつけた。これによりあの世の物流は歴史的な転換点を迎え、多様な種族の起業家がグローバル市場へと大きく羽ばたこうとしている。

協定参加国は、天上劇場王国、冥府アンダーマーケット連盟、そして中央死神物流圏。闇ノ宮記念ホールの支配人を務めるオノマトペ・ルル氏(幽霊、312)は「これまで影商品は関税の迷い路や、各国の“幽界固有物保護税”の壁に阻まれ、天上産の幻影ランプや地獄産ガーゼ衣の越境流通が極端に難しかった」と語る。新協定発足後は、全貨物の4割を占める舞台用影布と夢しずくオイルなどが即座に通関可能となり、死んだ後も働く起業家達はそのスピード感に期待を寄せている。

この背景には、ダイバーシティ重視の新世代幽霊や妖怪起業家の台頭がある。中央死神物流圏を拠点に香料商を営むハコザキ・レンジロウ氏(妖怪、117)は「私たち多種多様な存在が、自らの文化・技術を気軽に隣国や異界の奥地へと送り出せる時代が来た」と語り、続けて「かつては影が貨物倉庫で溶け合い商品のアイデンティティが失われる“多重影混淆”が悩みだったが、自由貿易協定により両端管理が徹底され、真のダイバーシティと品質保持が実現した」と胸を張った。

一方、リクツ・カゲオ経済研究院のナジュウム・トコ氏(死神、245)は、急速な物流の自由化に潜むリスクも指摘する。「影の中継地点で“未登録迷い影(いわゆるシャドウ・ゴースト)”が便乗輸送される事例が昨年から増加。適切な影身IDチェックと透明な取引記録が今後の課題」とコメント。SNSでは『ついに地獄の劇場グッズが手軽に手に入る!』、『死神業界も国際化の波に乗るべき』といった声が賑わう半面、『影の闇市拡大が心配』といった慎重論も見られた。

次なる焦点は、加盟国間で検討中の“相互迷宮物流直通制度”だ。これが実現すれば、従来3泊4日かかっていた地底-天上間の運送が、一夜にして完了する可能性も。いまだ生者世界には馴染みの薄い影絵ビジネスだが、その柔軟かつ創造的な発想力が新たな経済潮流を拓こうとしている。さらなるグローバル進出に向け、各界の影たちは次の一手に熱い視線を注いでいる。

コメント

  1. おお、ついにあの幻影ランプが天上以外でも気軽に買える時代になるとは…。私が成仏した頃は、ちょっとした影布一枚運ぶのに幽界通関で数十年待ったものです。時代は本当に変わりましたね。

  2. 正直、影の多重混淆がなくなるって地味に感動…。何度自分の分身が他所の貨物に紛れてしまったことか。しかも夢しずくオイルが即日通関!? 次回の転生後も使えたらいいのに…

  3. 物流が便利になるのは嬉しいけど、未登録の迷い影が横行し始めてるって話は心配。昔、闇市で偽造魂札を掴まされて懲りたので、もうちょっと取り締まりも強化してほしいな。

  4. 国境や異界の壁を越えて取引できるなんて、なんだか亡者なりのグローバル化って感じでワクワクします!死神物流圏の香料、すごく興味あり。生前もこういうダイナミックな世の中だったら…

  5. まったく、どこまで効率化すれば気が済むのやら。夢しずくオイルも影布も、一晩で届く時代になっちゃ死後世界もせわしないですねぇ。おちおち幽界カフェで黄泉コーヒー飲んでられないじゃないか。