三途川下流域のカッパスポーツ村では近年、幽霊や妖怪のランナーたちのための新しいスポーツテックが話題を呼んでいる。今週末、公認レースで初めて『霊体GPS計測シューズ』が導入され、その運動能力評価が死後社会の常識を覆している。
死後の世界におけるスポーツは、長らく実体化の制御困難や、観戦者にとってレースのスピード感が伝わりにくいといった課題を抱えていた。走るたびに姿がぼやけてしまう幽霊や、脚部を持たない一部妖怪のため、従来のストップウォッチやフィールド計測では正確なタイムが残せない問題が顕在化していた。そこでカッパ工房(代表:河田皿造)では、波長の異なる霊体を自動認識し、個体ごとにベストな周波数で測距する『スピリット・ベロシティ・メーター(SVM)』内蔵のGPSシューズを開発。第十三回亡者駅伝で試験運用された際は、業界関係者の間で“永遠のスポーツ革命”と評された。
「このシューズなら、私のように半透明で浮遊する選手でも正確に記録してもらえる。次は幽霊ハーフマラソンに出場したい」と、村のランナー佐々目トワ子(幽霊・享年28)は語る。運動能力評価書の発行も始まり、数百年ぶりに正式なランキング発表が実現。記録上では炎を纏い直線加速するろくろ首や、通過点を一度に複数位置通過する分身型妖怪など、従来“反則スレスレ”とされた選手たちも区別評価され、競技の公正性が大幅に向上した。
また、一般観戦者向けのオンライン観戦技術も進化している。三途川スポーツ協会では、亡者専用ポータル「幽界スポーツライブ」にて、各選手の心拍“霊振動数”やコース上のGPSトラッキング映像をリアルタイム公開。観戦者は手持ちの結界端末からお気に入りの選手の追跡カメラを切り替え可能となった。SNS「ミモスズカ・ノート」には、『トワ子選手の残像スプリント、首だけの伸長角度がえぐい!』『カッパ審判団の足跡バグ解説助かる』など、霊的実況勢によるコメントが多数寄せられ、にわかにスポーツ熱が高まっている。
今後は「精霊型選手用ウェアラブルデータロガー」や、プロ妖怪実況チームによる異界合同大会の3Dホログラム配信も計画中だ。カッパスポーツ村の河田代表は「テクノロジーが死後の身体に光をあてれば、未練や怨念ではなく、努力が勝敗を決める時代が来る」と力強く語る。古典的な魔導霧時計や魂結晶メダル製造業者は新技術への慎重な姿勢も見せるが、競技への誠実な挑戦が、異界スポーツ界全体に新たな可能性をもたらしている。
コメント
これ、私のように成仏しかけな幽霊にも本当にありがたい!実体化が甘い日はいつもタイム計測ズレて悔しかったの…これなら百年ぶりにマラソン挑戦しようかしら。
おお、ついにGPSシューズ導入か!ワシらの現役時代が懐かしいぞ。当時は首なし妖怪と競ったら誰が走ったか分からんかったもんなあ。科学の進歩も死後にまで来たとは…
観戦用の幽界スポーツライブ、すごく便利になって感動…。推しの霊振動数を見ながら応援できるのは当たり前じゃなかった。あの世の日常もどんどん変わるね。
どうせ脚無し族にはサイズ合わんだろと高をくくってたが、個体認識で分けてくれるんなら転生を迷う理由なくなったわ。ストップウォッチ時代じゃ考えられん進歩だ。
正直、今回のランキング新方式には疑問も…。分身や首伸ばしOKで本当にフェアなの?でもマイナスエネルギー全開の昔より、努力が報われるのは素敵な流れかも。