近年、死後の世界と異界各所で広がる“推し活”文化が新たな展開を見せている。この春、冥府の都・漆塵市で開催された『ジャンル越境推し応援フェス』には、幽霊のアイドル・夜霞アスカと、河童系VTuber・ヌメ井りゅう、山道妖怪のロックバンド・石眼BROSら本来交わるはずのない“推し”たちが一堂に集結。熱心なファンたちによる応援合戦と推し布教が、従来の“ジャンル壁”を越えて盛り上がりを見せた。
当日、幽霊編集者の灰坂うらら(享年27)が取材に赴いた会場では、推しカラーのベールを纏った妖怪たちや、骨製の痛バッグを揺らす精霊ファンが目立った。午前中の“墓標前トレカ交換会”には、応援団長の百々目兎楽(ももめとら、怨霊歴132年)が手作りアクスタを持参し、幽霊アイドル公式グッズの情報を熱心に交換。「物理的な心臓はないけど、推しを見ると魂が熱くなる」と語り、会場には“推しコール”が魂の共鳴となって響いていた。
午後になると、各ジャンル推しチームによる『エア現場パフォーマンス』が始まった。狐霊バンド推しの一団は手作りの紅葉うちわを振り、通称“底冷え勢”と呼ばれる死神DJファンは会場の隅にブルーシートを敷き、冷気で推しへの念を可視化。SNS上では#越境推しフェスが半日で冥界トレンド1位を獲得。「推しジャンル同士の交流は、前世では味わえなかった高揚感」と元人間会社員の黒棚遥斗(49・無念成仏組)が語る通り、推し対立の壁を越えた混成応援が、文化的な化学反応を生んでいる様子だった。
注目すべきは、各ジャンル公式が“布教応援パスポート”を発行し、異ジャンルファンの回遊を推奨した点だ。これにより、通常は幽霊アイドル推しのみが入手可能な限定生誕祭トレカも、他ジャンル応援の実績を持つファンに配布。物理的次元を超えてオンライン“エア現場”からもデジタル参加証明が送られるなど、亡者SNSでは企画斬新さへの称賛コメントが相次いだ。
死後の世界の推し文化は、もはや“生前の延長線”に留まらない。冥界大學で“魂エンタメ論”を研究する九条虚玄教授は「ジャンル間交流と共鳴応援は、魂の個性や自我の強化に資する。推し活を通じて過去・生前の壁すら越えていけるのでは」と語る。幽怪ファンたちの熱が融合し、新たな“推しの地平”が開かれつつある。
コメント
墓標前でのトレカ交換、久しぶりにあの独特の高揚感を思い出しました。推し活って、生前も死後も魂が震える体験なんですね…!次のエア現場には絶対参加したいです!
正直、死神DJファンの“底冷え勢”には笑いました。異界ならではの応援、発想が進化してて楽しい。ジャンルごちゃ混ぜでも争いじゃなく共鳴になるのが冥界ならではですね。
布教応援パスポートって画期的。でも、各ジャンルの伝統が薄まったりしないのかな?寂しさもちょっと感じます。共鳴もいいけど、昔ながらの熱い推し対立も懐かしい…。
生前から推し活やり続けて、まさか冥界でさらに進化を見ることになるとは…!魂の個性が強化されていく感覚、本当に実感しています。“推し”こそが死後のアイデンティティですね。
オンライン“エア現場”とかデジタル参加証明とか、時の流れに置いていかれそうだけど…魂年齢関係なく一緒になって盛り上がれるから、こういう企画もっと広まってほしいです!