あの世での生活を大きく様変わりさせつつある新しいシェアリングエコノミーサービス、“シェア降霊”が今、幽世中の話題を独占している。物の貸し借りを超え、今回は「憑依」を通じてスキルや体験を共有する特異なP2Pプラットフォームが次々登場。実体を持たぬ幽霊や多才な妖怪たち、さらには在野の陰陽師集団までが巻き込まれる奇妙な経済圏が生まれている。
サービス利用者が急増するきっかけとなったのは、幽世SNSで拡散された『スキル憑依で“生者並みの早書き”を達成』という話題だ。依頼主の水無月幽衣（幽霊書道家・270歳）は、「生前は下手だった字も、書道狸の霊“若葉仮名”に一時憑依してもらうだけで、まるで名人の手付きでした」と語る。こうした憑依型スキルシェアの依頼は、相性や宿主の信用評価を可視化したP2Pレビュー機能によって急速に普及。“憑依プロファイル”を確認し合うのが今や習慣化している。
一方で、憑依権の貸借をめぐる問題も表面化しつつある。人気妖怪の紅葉鬼・寒川は「ある晴れ幽けき日、三魂同時に体を貸し出したせいで持ち主の記憶が混線し、仕事で“竹の子踊り”を踊り出してしまった」と苦笑。誰がどのスキルを扱うのか、事前に明確なクラウドソーシング契約が必須とされ、幽世自治庁も“過度な多重憑依”の規制案を今月から審議している。
また若年層を中心に、シェア傘や自転車シェアならぬ“分身シェア”も台頭。自分の分霊を短時間だけ遠隔地で貸し出し、食文化体験や観光ガイドの“代理現地化”を実現するサービス『影ノ行（かげのゆき）』には、死後の遠距離恋愛カップルや遺族と再会したい生者の利用が増えている。運営代表の天城翠（幽精霊）は「他界者も“あの世ライフハック”の時代。傘を貸すように体験もシェアする文化が根付きました」と胸を張る。
この潮流の裏で、古参陰陽師たちは「憑依の倫理審査が乱れている」と警鐘を鳴らす。百鬼夜行大学の篆書（てんしょ）教授・漆原夜市は「スキルシェアレビューが形式化すれば、『魂評価詐欺』の危険も。幽世P2P全体で信用評価システムの透明化と教育を強化すべき」と指摘。新たなシェアリングエコノミーが生と死の境界まで溶かす中、幽世は“共憑”経済の光と影を模索し続けることになりそうだ。
コメント
分身シェアとか昔の幽術では考えられなかったです。現世の若者もびっくりしそう。私も一度、誰かの料理スキル憑依してみたいな～。
多重憑依の話、昔からよくやらかしてたけど、今はP2Pで契約とか…時代も変わったもんだなぁ。こういう新しい仕組み、ちょっと羨ましい。
魂評価詐欺は本当にやめてほしいです。うっかり信用して、前世の恥ずかしい記憶とか晒したことあるから、レビュー制度ちゃんとしてほしい！
陰陽師が騒ぐのもわかるけど、新しい体験を分かち合えるのって幽界ならではだと思う。生前の家族に代理分霊で会えた時は涙が止まらなかった。
人間界でもすぐトラブル起きるけど、幽世でもシェアの揉め事は尽きませんねぇ…。まぁ、みんなで成仏サポートし合う時代、悪くないかも。