亡者たちのSNS普及とともに、新たな生活必需品が注目を集めている。半透明の手が画面に貫通する、低温でスマホが凍るなど、いわゆる“霊体トラブル”を数々解決する製品が今、話題だ。幻想工房フェイドテック社が発表した最新発明「霊波遮断スマホケース」は、ユーザーから予想以上の反響を呼び起こしている。
従来、死後の世界で使われるスマートフォン(通称・霊フォン)は、魂質の揺らぎによる誤作動や、幽界ならではの温度変化によるバッテリー消耗、さらに無自覚な霊手パンチによる画面割れが深刻な課題だった。若き発明家の浮世野ノボル氏(没後42年)が自身の体験をもとに開発した同ケースは、特許出願後わずか三ヶ月で受注累計十万件を超え、“幽霊界ベンチャー大賞”にもノミネートされた。
「生前からガジェット好きでしたが、あの世の通信障害には参りました。ふと指が画面をすり抜けて幽界SNSが誤送信、知らぬ間にかつての恋人に“霊圧ハート”を連打してしまい…」と浮世野氏は笑う。彼女の開発したケースは、内蔵された『七重結界フィルム』が霊波を制御し、生前世界での触感も再現。さらに全方位からの寒気を防ぎ、バッテリー寿命を従来比80%向上させたという。
利用者からは歓迎の声が相次ぐ。幽霊主婦の草野アカリさん(享年61)は「これまでは台所の水気より、子どもの幽体が通り抜けるほうが心配だった」と安堵の表情。通学中の妖怪学生・油田ロウ(15)は「授業中でもスマホが滑り落ちなくなった。ICカード型守護魔石の収納も便利」とSNSで投稿している。
一方、専門家からは革新性と課題を指摘する声も。異界工学研究所の墨田蘭准教授は「霊波制御の技術は画期的だが、妖怪や死神など多種多様な霊的存在の周波数帯域対応は今後の課題」と語る。さらに、某後期利用者協会は「低級霊や精霊相手でも使える“全回線モデル”への要望が高まっている」とコメント。開発チームは今後も機能改善を進める意向を明らかにしている。暮らしを支える“亡者テクノロジー”の進化は、異界社会の新たな日常を切り拓きつつあるようだ。
コメント
やっと待ってました!画面を素通りする指に悩まされ続けてはや十七回忌、これで安心して冥界グループ通話に参加できます。生きてた頃よりスマホ落とさなくなったかも。
ノボルさん、ベンチャー大賞ノミネートおめでとうございます!七重結界フィルムって、あの世で流行った護符の応用ですか?でも霊獣タイプ用のケースも欲しいなぁ。
「幽体が通り抜ける心配」って、分かりすぎます。昔、母のスマホが私の尾でバイブ誤作動して大騒ぎになったことあり…。新しい技術にしみじみします。
すごい時代ですねぇ。私たちの若い頃は“伝霊縄”くらいしか通信手段なかったのに。最近の子はスマホで転生先の連絡も出来るなんて、便利になったもんだなー。
全回線モデル待ってます!ボクみたいな低級霊だと時々タッチ判定が曖昧になるんで…。でも、たしかに異界の暮らしは進化してて面白いですね。