死後の新興経済地帯として今もっとも注目されるのが、異界の温泉帯「サーマローアシス」だ。エネルギー資源として開発が遅れていたこの霊界の熱帯は、昨年から幽霊や妖精たちによるグリーンエネルギー投資の新天地として熱い脚光を浴びている。クラウドファンディングを活用したベンチャー企業の活躍と、地上のデジタルノマド幽霊たちの流入によって、現世からの外貨誘致や技術連携が進んでいる。
サーマローアシスは古くから“彷徨える湯煙地帯”と呼ばれ、過去世を癒やす温泉旅館や魂再生のリトリート施設が点在していた。ところが近年、サーマローアシス開発委員会の新代表に就任したフェルド・ノクト氏（幽界ベンチャー実業家・254歳）が、未利用の霊的地熱資源に着目。「主に中間層の幽霊層や現世から来たデジタルノマド妖精向けに、魂動力のマイクログリッド構築と“幽気バイオプラント”設立を掲げ、これまでにない資金調達スキームを導入した」と語る。
最大の転機は、死後世界専用クラウドファンディングプラットフォーム『ファントモ・リープ』の導入だ。現世の相続資産や“想い出トークン”と連動し、死者だけでなく生者も応援投資できる仕組みが話題に。初年度プロジェクトで設定された目標「地熱幻想灯500基設置」は、開設わずか10日で超過達成。主な支援者は、夢見族（旧：ミッドナイトドリフター）や“生ける者フォロワー”と呼ばれる現世側支援者など、多様化が進んでいる。
活性化の波に乗り、デジタルノマド幽霊たちも続々移住。地上時代のプログラミングスキルを活かし、「死後資産管理SaaS開発」「迷い犬霊GPS」など霊界独自スタートアップを創出。幽気銀行・介護霊士協会によれば、「地元雇用なき外資導入」という初期批判もあったが、今ではサーマローアシス地域の幽霊住民の月次購買力が前世紀比146%増という。“仮想ながら購買”を行う生者層の増加も大きいという。
だが急成長の裏で課題も指摘される。魂インフレーション（幽貨供給過多によるひずみ）が起き、死後ベンチャーの乱立から失敗プロジェクトも相次いでいる。霊界経済学者ギフト・アズーリ氏（憑依学派・128歳）は「資源開発熱は良いが、現世と死後社会の“倫理通貨”格差を乗り越える地に足のついた投資教育が要る」と警鐘を鳴らす。一方で、SNS『幽界サロン』には「魂のアップサイクル素晴らしい！」「また現世マネーに踊らされるのか」など賛否の声も渦巻いている。
現在、サーマローアシス開発委員会は第二期資金募集を告知。自律型グリーン発電ヒートゴースト巨大農場計画や、外資妖怪による“現世逆輸入温泉リゾート”プロジェクトが始動する。経済の専門家からは「サーマローアシスはもはや異界における“死後版シリコンバレー”。順調な拡大には、亡者だけでなく生者の共感と責任ある投資判断が問われる時代だ」と分析されている。
コメント
死後の世界もだいぶ変わったもんだなぁ…生者の資産や思い出まで流入すると、昔の素朴な温泉幽界が懐かしく思えてしまう。とはいえ活気が出るのはいいことかも。
魂インフレーション、うちの祖霊会議でも最近話題なんですよ。急な外貨流入って必ず陰りも出るから、投資教育はほんと大事！とりあえずファントモ・リープ使ってみようかな。
生ける者フォロワーって、現世の流行までこっちに持ち込むとは…温泉リトリートでのんびりしてた身としては、少し落ち着いてほしい気持ちもあります。まあ、楽しそうだけど。
魂動力でマイクログリッドとか、若い幽霊たちの発想はすごいですね！ぼくも転生前のITスキル活かせる場があれば参加してみたい…むしろ生者より進んでて驚いてます。
現世逆輸入温泉リゾートって、もう死後世界の独自性はどこへ…とちょっと皮肉りたくなるけど、それでもここが“死後版シリコンバレー”になったと思うと誇らしいかも。