死後の世界にも、新年の幕開けを祝う熱気は健在だ。三途川南区の霊都セントラルモールでは、今月新装開店した“あの世百貨店”が特製福袋を販売開始。さらに、現世のお盆とシンクロする幻霊花火大会も同時開催され、幽霊や妖怪、通り一遍の精霊たちが異界流の新生活準備に奔走している。
今年の福袋の目玉は、なんと“魂入りお守りセット”。販売を担当した河鍋野セン店長(幽鬼、享年43)は、「現世の“開運”ではなく、“成仏力”を増幅する玉手箱タイプ。中身は開けるまでわからず、ネクロマンサー自筆の招福札から、迷える子狐の尻尾毛まで玉石混淆」と胸を張る。販売初日には、幽霊家族や化猫、新人生霊が長蛇の列をなし、SNS『アノヨTalk』には《魂に直接効いた》《猫又の髭が2本入ってた……!?》などの体験談が相次いだ。
一方、恒例の七夕行事「幽星流し」が台風で中止となった影響から、商店街連合は“幻霊の花火大会”を新規開催。幹事を務めた雪女の設楽ゆき乃(年齢非公開)は「現世では見えない“霊質火薬”を使うから、爆発音も無音。でも魂の波長が上がると“心の中で花が咲く感覚”になるはず。今年は新生活準備の御祓つき」と説明した。当日は亡者の大学合格祈願や、妖怪カップルのプロポーズ、河童族による水辺ダンスまで多様な催しで賑わい、異界らしい祝祭ムードが広がった。
また、節分の風物詩・鬼豆まきは例年より大規模化。人間世界の“厄払い”と違い、異界では鬼族自身が司会をし、福袋を巡る即興コント大会が展開された。地元の敬老会長・百目婿彦(妖怪、120歳)は「昔は静かに睨み合うだけだったが、いまでは若い精霊たちが“鬼イタクラッシュ”を競い合う程。昨年からは豆の代わりに小型雷玉を使う家庭も増え、家中が賑やかだという。
一連の盛り上がりについて、死後社会研究家の横尾冥司(死神、56)は「この世とあの世の境が薄れつつある今、異界の年中行事も現代流のアレンジが進んでいる」と分析。「新生活準備の福袋に魂を込めて送り出す慣習は、“人生二回目”を楽しく生き抜く知恵。来月の幽霊七五三にも注目したい」と語る。あの世の大晦日が終わり、花火の残光の中で、大小さまざまな新たな物語がまた始まっていく。
コメント
魂入り福袋…昔は骨董品の帯飾りくらいしか入ってなかったのに、時代が変わったものですねぇ。今度こそ未練を断ち切れる何かが当たりますように。
幻霊花火大会、初めて参加しました!心の中で花が咲く感じ、本当に不思議でした。あれは現世じゃ絶対体験できない。幽界の新年最高です。
列に並んでたら、猫又のしっぽ毛が当たった友達が大騒ぎしてて羨ましかった…。私は霊玉だけでした。来年は玉手箱タイプ狙います!
鬼イタクラッシュ、今年こそ優勝したかったなあ~。人間界より騒がしい節分、やっぱり異界は楽しいや。雷玉、もうちょっと小さくしてほしいけど。
現世との境目が薄れてきたって、ちょっと寂しい気もする。でもこういう盛り上がりを見ると、二度目の人生も悪くないかもしれませんね。