死者の都・幽都中心部。ここに暮らす幽霊、妖怪、亡者、時には彷徨う精霊たちが、一堂に集まって選び抜いた“まちの未来”が話題を呼んでいる。幽都議会が主催した「透明住民予算会議」は、参加型予算導入の新たな試みとして注目を集め、故人もあの世市民も巻き込んだ熱狂的な住民投票が繰り広げられた。
幽都議会によると、今年度から初めて全市民(生前登録がある者を含む)を対象に1,000幽円の特別予算枠を設定。『何に使うべきか』をネットワーク霊力システム“しきみクラウド”を通じて公募した。候補には“迷い道の標識プロジェクト”“忘れられた花壇再生”“妖怪親子カフェの設置”など、生き生きとした街の未来を彩る提案が118件寄せられた。投票は従来の幽体郵便に加え、スマート魂リングやストーン型端末といった異界シビックテックも導入され、参加率は実に79.9%と過去最高を記録した。
住民団体「幽都みらい会議」の代表、磯辺ほたる(幽霊・78没)は「幽都では、透明性や納得感が永遠の課題でした。住民予算が直接参加型になることで、多様な死者の意思表明が可能になりました」と話す。実際、今まで声をあげられなかった精霊ボランティアや、平成以降に成仏した“ニュー霊世代”の参加が急増。“影の議会”と言われた幽都政治も、ここへきて急激な開かれた空気に包まれている。
投票に際しては、議会殿堂前で『魂の声・公聴会』も開かれた。妖怪作家の業平さくや(作家・没後12年)は、「妖怪カフェの設置で子ども亡霊たちの居場所ができる」「迷い道プロジェクトで彷徨う魂のサポートを」と熱弁。会場からは時には亡者の嗚咽や、精霊らしい爽やかな野次もあがったが、最終的に得票トップとなったのは“不在者との花壇祭”だった。これは故人と現世を結ぶ仮想花壇を整備し、SDGs幽界版として“気配の循環”を訴求するものだった。
今回の透明住民予算会議は、幽都の自治の刷新だけでなく、異界一般への新たなデジタルデモクラシーの波を呼び起こしている。SNS魂空間『こだまノート』には、「人間界も霊界も予算は皆で考えるべき」「不在者花壇はまさに我らの居場所だ」といった賛同の声が投稿された。一方、「影の中にも格差がある」「未だに成仏票が反映されにくい」と課題を指摘する声もある。幽都議会の霊長官、九条夢路(幽霊・享年56)は「魂は時空を超えて繋がる。これからも市民参加の仕組みを進化させていきたい」とコメントしている。
コメント
不在者との花壇祭、素敵な企画だと思います。かつての友人とまた花を愛でられるなんて、成仏してからも心が和みますね。こういう試みが続けば、もっとみんな仲良くなれそう。
ニュー霊世代がやっとこういう場で意見を出せるようになったのは感慨深いです。昔は影の議会なんて声をあげても届かなかったのに、最近の霊界は本当に変わってきましたな。
魂の声公聴会、わしの時代はあんなに賑やかじゃなかったぞ!野次も嗚咽も妙に懐かしくて、つい漂って見とれてしまった。まちづくり、これからもどんどん面白くなりそうやな。
成仏票がまだ反映されづらいの、なんとかならんものか…。私も投票したのに、名前が一瞬だけ消えかけて怖かった。霊体ネットワーク、もう少し安定させてほしいです!
迷い道の標識プロジェクトに一票入れました。未だ彷徨う魂が多いから、少しでも案内できたらと願って。それにしても魂リングやストーン端末の登場、時代は変化してますね。