亡者界SNSでゴーストインフルエンサー急増 新“霊ール”動画が企業広告戦線を席巻

薄い着物をまとった半透明の女性の幽霊がスマートフォンを手に、明るい異界のラウンジで動画を撮影している様子。 SNSマーケティング
幽霊インフルエンサー・胡蝶雪乃が人気SNS『霊ール』の動画撮影中に集まる亡者たち。

死後社会でコミュニティが生活の中心となるなか、亡者向けSNS広告市場が活況だ。今、最も話題を呼んでいるのが“ゴーストインフルエンサー”たちによる超短編動画「霊ール(れいーる)」だ。現世の流行を巧みに取り入れつつ、彼岸特有のユーモアや悲哀を交えた投稿が共感を呼び、企業や霊界官庁もキャンペーン活用を始めている。

発端となったのは、125年前に溺死した経験を生かして人気上昇中の幽霊インフルエンサー・胡蝶雪乃(こちょう・ゆきの/享年19)の存在だ。雪乃は“金縛りチャレンジ”や“お札はがしダンス”といった斬新なショート動画を投稿し、わずか3ヶ月で亡者界最大級のフォロワー数(刹那計・約67万魂)を獲得した。「出し抜かれた!」と驚く声も多く、同業の河童妖怪や座敷童子たちが相次いでエンゲージメント獲得バトルに参入している。

これに目をつけたのが冥府大手の霊体エステ企業“セレナーデ精粋社”だ。同社は雪乃を起用した『半透明パック』PR企画を実施し、公式アカウントに共演動画を掲載。幽霊限定の“透け肌キャンペーン”としてバズを生み、過去最高の注文数(前世比301%増)を記録、SNS広告部門は一躍トップの広報部門となった。普段SNSに懐疑的だった蘇生医・冥界田志郎(めいかいだ・しろう/死神歴55年)も「彼女の“霊ール”には不可視的な説得力がある」と太鼓判を押す。

亡者SNS(旧「彼岸の集い」)の運営母体では、急速に拡大するゴーストインフルエンサー市場のガイドライン整備に乗り出している。暴走する変身バズ動画や強引な生き霊フォロワー誘致に対し「死者間コミュニティの秩序維持」を求める声も。SNSストラテジストの蘆屋蝉丸(あしや・せみまる)は、「公式アカウントならではの社会還元や、妖怪・幽霊ならではのリール文化が根付くには、現世とは異なる規範づくりが不可欠だ」と語る。

今後、“霊ール”をきっかけとした異界SNS広告は、死後社会の消費・娯楽のみならず、失われた魂の繋がりや新たな霊的コミュニティ運営の要として注目される。胡蝶雪乃は、日夜届くフォロワーの「未練ボイス」を励みに、さらなる異界的バズに挑むという。現世では決して得られなかった共感とエンゲージメントの渦――その熱狂は、生死を越えて拡大し続けている。

コメント

  1. 金縛りチャレンジの動画、つい憑りつかれて何度も再生してしまいました。亡者界も時代が変わりましたねぇ…私のころはお札といえばガチで怖かったのに、今やダンスのネタとは。雪乃さんの発想力がまぶしい!

  2. こういう流行、ついていけません…成仏すべきか悩みながら静かに眺めてますが、魂にもSNS疲れってあるんですね。昔ながらの井戸端会談が懐かしい。

  3. セレナーデ精粋社の半透明パック、受肉組にも効くのかな?バズってるから気になって夜な夜な化けて試してみたくなる。胡蝶さんの“霊ール”見てると、現世とあの世の境目がどんどんあいまいになってきますね。

  4. 雪乃ちゃん、125年の時を越えてついに大ブレイクかぁ。溺死組としてはなんだか誇らしい!だけど強引な生き霊フォロワー誘致とかは心配…。霊界って自由だけど秩序も大事よね。

  5. 『死者間コミュニティの秩序維持』っていうけど、混沌こそ冥界の本領じゃ?ガイドライン整備しすぎて融通効かなくなったら夜歩きの面白さが減る気がする。まぁ霊ールで百鬼夜行が配信される時代、何が起きても驚かんけどな。