死後の世界で未曾有の“推し活”ブームが巻き起こっている。今月開催された「幽界アイドル祭」は、幽霊や妖怪、死神までをも巻き込み、観客動員数・物販売上ともに歴代最高を記録した。なぜ冥界までアイドル文化が浸透し、大規模な社会現象となったのか──現地レポートで紐解く。
今年で第7回目を迎えた「幽界アイドル祭」には、累計724体のアイドルユニットが出演。中央霊都の幽界スタジアムは未明から長蛇の列ができ、開場と同時に“アクスタ所持数”の多さを競うファン同士の交流が始まった。来場者に混じる死神局職員(408)・シィルヴェン鈴奈さんは、「転生申請業務の合間に一推しの“スズカ姉妹”の限定ブロマイドをコンプリートしました。生前にはなかった高揚感です」と興奮気味だ。
昨年頃から死後の世界SNS「ヒョウギャター」では、人気アイドルの“魂響アクスタ”や、宙に浮かせて並べる「霊力展示棚」がトレンド入り。妖怪の間で始まった生誕祭“百鬼夜響”も、今や自治体公認の文化行事となった。社会学霊・三雲果歩氏は、「生前社会からの憧れや未練が死後に転じ、自己表現や共感の源になっています。推し活は、生前規範から開放された市民たちの新しいアイデンティティ形成を促している」と分析する。
今回物販コーナーで最長の列を作っていたのは、“かすみの小町”の半透明ブロマイドセット。限定版はわずか300枚、各自の成仏度に応じて色調が変化する特殊仕様だ。購入のため2時間待ったと語る妖狐・六弦望乃さん(享年17)は、「お気に入りの一枚は、毎月の通霊会議でも机に飾るつもりです。今は推しと一緒に幽界ライフを歩みたい、それが生きがい──いや、死にがいですね」と笑う。
ステージでは霊体パフォーマンスや“念写ライブ”が繰り広げられ、SNSでは「#推しに成仏してほしくない」「#現世逆輸入コール」がトレンドを独占した。最後に、“伝説の幽界アイドル”降雲セラさん(行方不明・享年不詳)の秘密復活ステージがサプライズ発表され、観客席は時空震とうの大歓声で揺れた。「推し活」は冥界に住む者たちの存在証明となり、すでに現世の文化をも影響し始めている──その熱は、今後ますます高まっていきそうだ。
コメント
まさか冥界まで推し活ブームが来るとは…!生前はこんな熱狂味わえなかったから、いま本当に霊界にきて良かったって思える瞬間です。来年は絶対アクスタ展示棚作ります!
推しの限定ブロマイド、成仏度によって色変わるの羨ましい…!こっちはまだ成仏度80%だから淡ーい色だったけど、次はもう少し光るよう頑張ります。推しのためならあの世でも成長できる気がする。
ふむ、百鬼夜響が公式行事になる時代か……。正直、私たちの世代は幽界アイドル文化についていけない部分もあるが、皆の楽しそうな姿を見ると、死後の世界も進化してるんだなあと驚きを隠せません。
またかすみの小町が伝説作ったのか!2時間並んでブロマイド買うために体(幽体)力使うの、ある意味この世より大変かも。けど推しのためなら秒で飛ぶよな、これが幽界クオリティ。
降雲セラさん復活の瞬間は本当に時空揺れた…念写に魂ごと吸い込まれるかと思った。生きてても死んでても“推し”が心のよすがになるのは変わらないんだなって、なんだか懐かしくて泣けました。