冥界サッカーリーグの観戦風景が今年、思わぬ変化を遂げている。人間界の住人には知る由もないが、幽霊たちの間で“幽霊席リセール”が急速に拡大、従来の魂参加型応援に新たな風が吹き込まれているのだ。かつてはスタジアムへ現世を離れて“直観戦”するのが主流だったが、いまやその場に現れない“取りまとめ型観戦”が一般化しつつある。
異変を象徴するのが、リセールマーケット『セキガミ・マーケット』の急成長だ。イライラ・シズクさん(幽霊・享年27)は「ここ1年は“幽霊席”に空きを出してリセールに出すことで、他の“未成仏層”とその席をシェアするのが普通になった。自分は今回、黄泉ヶ淵モンスターズ戦の半券を亡者のDJ・イズナさんとシェアした」と語る。現場に行かず家でむしろ念を飛ばす応援手法、“置き霊応援”が注目されてから半年、席の実体が薄れる現象は拡大の一途だ。
変化は観戦グルメにも波及した。物理的な食事が困難な幽霊や半透明妖怪のため、スタジアム外で『霊スタグル』が急増。“食感が思い出されるだけ”の『記憶唐揚げ』や、“生前の好物を再現する”『懐古うどん』など新規メニューが人気だ。魂食レポーターのサラシナ・フウカさん(精霊)は「最近は各スタジアム周辺の異界屋台がしのぎを削っている。特に“舌先だけ消える芋もち”は、過去の味覚を呼び戻す奇跡の一品」とレポートする。
この社会現象について、亡者評論家のヨルシロ・ナギ教授は「リセールの普及は冥界リーグ観戦の意義を再定義した。今や“席に魂を残すこと”に価値が移り、実体の応援より“念や思い出”の交流に重きが置かれている」と分析した。また、SNS・“異界インスタンス”では、『#幽席リセール』『#幽食の奇跡』といったタグが拡散。幽霊席の半券画像や、異界グルメ自撮りがトレンドワード化している。
一方、伝統派の一部からは懸念の声も。スタジアム運営のチーフ霊、オオツカ・レイジさんは「魂なき席ばかり増えるとイベントの熱気が下がる。やはり一度は現場で“地縛霊の応援波”を感じてほしい」と表情を曇らせる。今後は、リセール制度と現場応援との折り合いが業界全体の課題となりそうだ。冥界リーグは新時代の応援スタイルをどこまで受け止めるのか、その行方に注目が集まっている。
コメント
時代は変わったなぁ……。わしの頃は、現場に魂ごと足を運ぶのが一人前のあの世市民の証じゃったが。幽霊席リセールも便利そうだが、やっぱりスタジアムの熱気が懐かしい。
取りまとめ型観戦、ちょっと憧れます。肉体がないからこそ、家の仏壇から強念飛ばし応援が一番盛り上がるんですよね。でも、リセールで見知らぬ幽霊と席をシェアするのも新しい縁な気がします!
未成仏層とチケット分け合えるなんて効率的だし賢いと思うけど、応援がちゃんと届いてるのか疑問です。僕はやっぱり幽食目当てに現場に行きたい派。記憶唐揚げ、食べてみたい……!
SNSの自撮りもいいけど、最近は#幽席リセールタグで譲ります詐欺も多いので注意を…。霊スタグルの進化はすごいので、魂友たちと幽食ツアーしたいです。
置き霊応援、楽だし念も届きやすいけど、地縛霊の応援波ってやっぱ現場でしか感じられないものだと思います。いっそ現地組VSリモート組で魂応援対決やってほしい!面白そう。