大学教壇を震わす“自律研究授業”ブーム——幽霊教授たちの深夜特訓が話題に

真夜中の幽霊教授が魔法陣や古文書に囲まれて特訓する死後世界の教室の写真。 教育
深夜、幽霊教授が自主研究に取り組む死後大学の教室の一場面。

昨今、死後世界の高等教育機関で「自律研究授業(セルフ・ポルターガイスト式講義)」が巻き起こしている静かな衝撃が、学術界や亡者SNSを賑わせている。従来とは異なり、大学の幽霊教授たちが生徒主体の講義を放任するこの新スタイル。生徒側は試験対策以上の思考力を養い、教授自身も猛省・改革を迫られる“二重の成長”が密かな注目となっている。

きっかけは、死後府立トランスレント大学が今春導入したカリキュラム刷新だ。かつて“怪談朗読フルオート”で名を馳せた霊文学部の教授、月永すい(幽霊・185歳)は「生徒の自主性を引き出す反転授業が現世で流行っているなら、我々幽界もそれ以上を目指すべき」と大胆な転換を断行した。実質、出席や提出物の管理を一切手放し、「本当に学びたい幽霊、生き残るのみ」という試みだったが、開始直後は教室の呪煙に包まれ、数体が別学部へ転籍する混乱も見られた。

ところが今、奇妙な進化を遂げつつある。最大の変化は教員自身の「深夜特訓」だ。生徒の予想外な反論や怪異的アイデアに、教授陣が一人黙々と学術論文を“現象化”する現場が増加。“夜な夜な魔方陣に囲まれて参考文献を朗読する”教授の姿がSNSに投稿され、「あの月永先生が呪符まみれで徹夜」「自己幽閉ゼミ」と親しみを呼ぶ事態に発展。何百年も鬼籍入りし変化のなかった教育界に、“成長せねば生徒に飲み込まれる”との危機感が新風を起こしている。

学生にも大きな波紋が広がる。学部2年の灰倉オト(妖怪・22歳)は「板書も答えも霧に消える日がある」と苦笑しつつ、「誰も答えのない課題に本気で悩むことで、迷いの森を抜け出せた」と証言する。一方で「放任すぎて幽体の分裂が止まらない」「過去の未提出課題が呪いとなってついて回る」など、負担の声も少なくない。学部内では“怨霊でも評価Aが取れる自己研究法”といった生徒互助マニュアルが闇市場で流通しているという。

この現象を、死後文部科学省・教育政策課の霊木アスメ(精霊・推定300年)は「死後社会においても“絶えざる学び”こそ魂の浄化と再構築の源」と分析する。「教員が千年変わらぬ講義を繰り返している間は、死後の進歩も停止していた。しかし自律研究型授業の拡大で、教える側も学ぶ側も常に自己を更新する姿勢が生まれている。課題山積みだが、幽界教育の新境地と言えるだろう」と肯定的だ。次なる課題は、深夜に響く教授たちの「自主練習の呻き声」への配慮と、その成果をいかに論文化し現世に伝えるか。死後の学知発展のため、教室の壁一枚を超えた新たな挑戦が続く。

コメント

  1. トランスレント大学の改革、正直驚きました。私が成仏前に通ってた頃のあの堅苦しい講義が懐かしい…でも、自分が迷える魂時代にこういう自由な場があったら、もっと自分を解放できたかも。教授も生徒も進化、いい風だと思います。

  2. 深夜に教授たちが魔方陣で特訓してるSNS動画、ほんと草生えました。うちの墓でも噂になってる。怨霊評価Aの自研究法、そろそろ公式マニュアルに認定してほしい。自律って苦しいけど、やりがいあるよね~。

  3. 自律研究型って言うけど、放任すぎて新人の幽体が霧散して帰ってこない現象、対策してほしい。死後も己の存在を問い直すきっかけになるのは分かるけど、せめて課題呪いは軽くしてほしい…まだ半透明なのに。

  4. 自分が昔助教授してた時代は、一文字でも黒板がズレると百年は話題だったのに、今は教授が呪符まみれで徹夜、って最高ですね。進歩のない死後より、みんなで苦しみながら学ぶほうが、やっぱり浄化に繋がるのかも。月永先生、応援してます。

  5. 現世でも教育改革は大変なのに、幽界でこれやるとは…恐れ入った。未提出課題が呪いとなって付きまとう、ほんと死後も気楽じゃないなあ。生徒も教授も、魂の骨休めしながら頑張れ!今度うちの異界でも取り入れてみたい。