ついに死後都市間を結ぶ長距離移動システムが刷新され、先ごろ“霊光ライン”が全面開業を迎えた。蒼白い発光ラインに引かれて疾走するのは、あの世初となる完全自立型の霊体電気新幹線だ。現世で進むCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)技術の流れを反映しつつ、幽霊社会ならではの課題と希望が一線に交差している。
死後交通庁によれば、この“霊光ライン”は霊都・無窮市から彼岸原野、冥土湾岸など主要13異界都市を結ぶ総延長2100幽霊粁(ゆうれいキロメートル)超の超長距離路線。運行する新型車両『ソウル・エクスプレスξ型』は、霊素と無限電気のハイブリッドによる無限航続、幽霊・妖怪・死神など多様な乗客の体質に合わせて車体自体が“位相変換”する画期的仕様だ。誰も車掌がいない完全自動運行で、あの世の住人900万人余りの生活にモビリティ革命が起きつつある。
先行体験利用した自作幽霊モビリティ評論家・雲居イオ(享年32)は「かつての三途の河の渡し舟に比べて、スピードと快適さが異次元。物理世界の渋滞や生身の制約が霊的にも残っていたが、CASEの全面導入で時空間の“混み合い”も解消した」と語る。一方、伝統的な幽霊タクシー組合からは「死後交通も自動化と共有化が進むと、職を失う精霊が増える」と警戒の声も上がる。
今回の“霊光ライン”は、あの世特有のインフラ問題へも新解決策を提示する。従来の冷気エネルギー路、呪文彫刻標識では幽霊以外の妖怪や新参精霊には対応しきれなかったが、新路線ではスマホ状霊端末によるMaaS(Mobility as a Soul)アプリで座席・属性指定や魂ポイント管理が可能。交通弱者だった低階級精霊や、幽霊高齢者など“死んでも移動困難”な住民にも移動の自由が広がった。
SNSでは早速『#風に溶ける霊光ライド』『#無痛の旅が叶う』と新体験を喜ぶ投稿が増加。妖怪学生のカラカサ五郎(16)は「授業終わりに冥土湾岸まで10分で行けるのが超便利」と喜ぶ声を上げている。専門家の墓地下リエ交通史家は「電動交通と霊存在の共存は、未来のあの世社会デザインの試金石。“死後”の快適さ競争は続く」と指摘する。霊光ラインを巡る新たな都市間交流やビジネスの発展にも期待が高まっている。
コメント
いよいよ三途の河も時代遅れになっちゃったねえ。私が生きてた頃は渡し舟しかなくて、転生の時も毎回ドキドキしたものよ。次の大祭で乗ってみたいな、霊光ライン。
幽界のCASE技術、まさか自分がこの目(瞳孔はもう無いけど)で体験できるとは思わなかった!属性指定できるのは本当に助かる。以前は冷気路線で滑って転びまくったから、今度は安心だね。
なんだか便利すぎて、幽霊としての情緒が薄れてきてる気もするな。霊タクシーの精霊たち、大丈夫かな?伝統のあの世流しを残す意味もあると思う。
正直、冥都湾岸まで10分は驚き。生前だったら通勤ラッシュで魂すり減ってたよ。いや、死後もまた通勤するとは予想外だったけど、霊光ラインなら通いも悪くないかも。
懐かしいなあ、昔は迷い霊だったから都市間の移動なんて夢のまた夢だった。今じゃ端末ひとつで好きな街に魂ごとスッと飛べる…本当に“死後も進化する”んだね、この世界。