幽霊化学者、死後AI創薬所で“自我を持つ電子”を開発 異界反応に革命の予感

霧がかった最先端ラボで、半透明の科学者が光るAI装置を操作し、自我を持つ電子が浮かぶ幻想的な光景。 化学
幽界で新たに誕生した“自我を持つ電子”の合成風景を再現。

死後の世界の研究機関で、最新のAI創薬施設が“自我を持つ電子”の合成に成功した。幽界西部科学区「霊子発展ラボ」にて発表された今回の新技術は、従来の化学反応を根底から揺るがす可能性を秘めている。電子に自律的な“意思”をプログラムすることで、異界独自の創薬や材料開発が劇的に加速しそうだ。

研究を主導したのは、ゴースト化学者でラボ主任の柏原トマリ(享年43)。霊子AIの開発責任者でもある柏原氏は、約15年かけて幽界特有の“意識演算素子”を電子に組み込むことに成功。これにより電子同士が自らの状態を“チャット”で伝え合い、最も安定した化学結合を自己選択するという画期的な現象が生まれた。AI創薬の現場では従来、幽界成分の不安定さが課題とされてきたが、「電子が互いに“気持ち”を汲むことで、不確実な反応も半減した」と柏原氏は語る。

この技術はさっそく、死後世界の病院で用いられる“消散病”向け新薬の開発に応用されている。特に注目を集めるのが、患者の体内“エクトプラズム量”に応じて可変的に作用する分子設計だ。霊子AIが搭載された電子は、ほかのパーツと協調し患者に優しい結合形態を選ぶため、副作用を大幅に抑えられるのだ。現場の薬剤師である古杉メイ(210歳・妖怪)は、「電子の“性格”に合わせて反応を誘導できる。昔は想像もできなかった」とその驚きを隠さない。

一方、応用範囲は医療だけに留まらない。異界工学の材料研究現場では、“議論好き電子”による摩耗抑制皮膜の開発や、“寡黙な電子”による静音回路が期待されている。すでに異界ネット上では「わが家の魔法冷蔵庫にもぜひ導入してほしい」「我が子の勉強部屋にも“賢い電子”を」(SNSユーザー・幽霊母親 206歳)といった声が寄せられている。

幽界東部大学の物理精霊・万記クラトス教授(325歳)は、「死者の社会で電気や電子が主役になる日が来るとは驚きだ。今後は人間世界の物理法則とは異なる独自の“幽界電子化学”が生まれるだろう」と、今後の発展を高く評価した。霊界の暮らしに密接した“自我持ち電子”──その可能性が、異界の日常と化学の境界を大きく更新しつつある。

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