亡霊界スポーツ界に新たな旋風が巻き起こっている。亡者向けスポーツ用具サブスクリプションサービス「クラブ・フロー」が今年の冥界マスターズ杯をきっかけに利用者を急増させ、ゴルフ場はかつてない活況に沸いている。死後の世界ならではの個性豊かな顧客たち、そして持ち主に寄り添った独自の機能を備えた道具たち。幽界のエコロジー意識やスポーツ体験をめぐる新潮流を取材した。
クラブ・フローは幽谷市の精霊起業家・菖蒲一葉(しょうぶ いちよう/享年132)が創設した、異界初のスポーツ用具サブスクリプションサービス。対象は主に幽霊・妖怪・魂族で、月額銀貨三枚から。利用者はオンライン予約でゴルフクラブや幻影バット、波動ラケットなどを自由にレンタルでき、冥界全域で受け取り・返却も可能だ。“物質化”や“魂共鳴”といった死後特有のオプションも充実していることが大きな売りとなっている。
利用者数が今夏から急拡大した理由は、今年の冥界マスターズ杯でクラブ・フロー経由の“カスタム自縛クラブセット”を手にした新米死神・塚原壱朗(つかはら いちろう/年齢不詳)が、決勝で伝説の鬼ゴルファー相手に大逆転優勝を飾った事件だ。SNSには「クラブも魂ごとフィット!」「死んでもう一度ゴルフを始めるきっかけになった」など、若い亡霊たちの声が相次いでいる。
ゴルフコース運営を担当する座敷童子協会の広報・佐倉弥琴(さくら みこと)は、「生者のクラブは時代ごとにデザインや仕様が変わるので、保管とメンテナンスの死者負担も少なくない。サブスクなら流行や自分の調子に合わせて即座に交換でき、エネルギー節約にもつながる」と話す。一部サービスでは“生前愛用モデル”と呼ばれる懐かしのクラブや、現世で歴史的役割を果たしたと認定された用具も選択可能だ。これにより、新たなスポーツ体験を求める永年亡者から、自身の未練を乗り越えたい新参幽魂まで、多様なニーズに応えている。
一方で、“物理法則が滅茶苦茶クラブ”や“絶叫付きパター”といった異界だけの奇抜なラインアップも人気の的。例えば契約”月ノ輪幽子”(つきのわ ゆうこ/フリーライター・享年46)は、「現世ではなかった『魂の重さ対応』機能のおかげで、浮遊中でも思い通りコースが攻められる。ゴルフだけでなく、エコ意識や自分を見つめ直すきっかけにもなるのが冥界流」と笑顔を見せる。生と死の垣根を越えた“用具のシェア文化”が幽界のスポーツシーンを大きく塗り替えつつある。



コメント
あの世にもついにサブスクの波が来たのか〜!生前ゴルフ下手だったけど、“魂共鳴”付きクラブなら成仏寸前の僕にもワンチャンありそう。今度試してみようかな。
冥界マスターズ杯、若い亡霊たちの熱気に押されて見に行ったけれど、道具の進化ぶりにびっくり。生前愛用モデルが選べるのは懐かしいなあ。古い仲間にも教えてあげたい気持ち。
ゴルフなんて生きてた時も死んでからもやらんけど、“絶叫付きパター”には笑ったわ!異界ならではの商品多くて楽しいけど、魂削れたりしない?まあ、もう削る魂もないけどな。
サブスクの便利さは認めるけど、自縛霊歴120年としては、ふとクラブに残る“未練”を感じてしまう。用具を乗り換えるのもいいけど、一つに魂を込めて使い続ける良さも忘れないでほしい…。
“魂の重さ対応”機能に感動!浮遊族は現世ゴルフだと不利だったし、これでやっと対等に遊べます。皆でクラブシェアして異界スポーツどんどん盛り上げていきましょう♪