死者と生者の“魂肉調停法”が可決 弁護士協会に妖怪枠新設へ

半透明の弁護士と妖怪が家族と霊と交渉する法廷の一場面。 法と司法
生者と霊双方の権利を調整する新法の象徴的な調停風景です。

異界の司法制度に大きな変革が起ころうとしている。「魂肉調停法」の改正案があの世議会を通過し、法務省幽界局によって年明けから施行されることが決まった。これにより亡者と現世在住者、その家族間の権利調整交渉において、弁護士資格を持つ妖怪や精霊が公式に代理人として活動することが可能になる。死後にも続く“遺志”を公平に扱うこの法案に、各界から賛否が噴出している。

今回の改正は、霊的財産や未完了契約などを巡ってしばしば生者と亡者の間で泥沼化する“和解交渉”の慢性的な混乱への対応が背景にある。近年は、成仏コンサルティング企業「幽福社」の失敗事例を契機に、霊界から『我々の意思も現世で正当に主張したい』という声が高まり、法務省幽界局傘下の有識者会議が発足。会議座長を務めた半透明弁護士・唐衣 藍(からころも あい)は『死者の言葉が一方的に無視される現状こそが、魂の平和を妨げてきた』と記者会見で指摘した。

改正法では、弁護士協会に“妖怪・精霊代理枠”が新設され、例えば小豆洗いの如き水場系妖怪や、猫又など動物由来精霊までも裁判代理人として登録可能となる。ただし、資格取得には“霊的不偏潔性検査”の通過および人間社会の基本法律知識試験に合格することが必須条件。その厳格さは生者の弁護士試験以上、という声もある。既に異界SNSでは「ぶんぶく弁護狸(34)」と名乗る妖怪から『我々の長年の知恵で“迷える魂”も救います』と意欲的な投稿が相次いでいる。

一方で、現世在住の法律家や行政官からは『妖怪枠創設によって審理過程が複雑化し、公的業務の停滞を招く懸念が拭えない』(行政書士・苔脈 大悟)という慎重な立場も根強い。過去には、怪異弁護士による過度な“魂の弁明”が証拠紛失騒動や怪事件に発展したこともあり、法務省は『必要に応じて生霊調停士の第三者介入制度を検討する』と発表している。

今回の改正が目指すのは、死と生、その狭間を生き抜く(もしくは彷徨う)者すべてが等しく法の保護を受けられる世界だ。施行へ向けて法務省は今後、幽都や冥界側の行政機関、現世の家庭裁判所とも連携し、試行的な合同和解調停を順次開催していく予定だ。唐衣弁護士は『心残りのある魂が少しでも安心して次の旅路へ進めるよう、幽界と現世の“法の橋渡し”に全力を尽くしたい』と語っている。

コメント

  1. 魂肉調停法の改正、ついに来たかー。これで長年うやむやだった成仏費用の話も正式に交渉できそう。昔、成仏コンサルに頼んで失敗した身としては、もう少し早ければなあとちょっと悔しい。ともあれ、これからは思い残しが減ることを願ってるよ。

  2. うちの親族(みんな猫又)が代理人になれるなんて、誇らしいにゃ!人間社会の法律は正直むずかしいけど、修行で覚えた“猫又律”が役立つ日が来るとは。こっそり応援してるから、みんなもしっぽを巻かずにチャレンジしてほしい!

  3. 私は賛成!今まで霊的財産のこととか、現世の家族に伝える手段がなさすぎた。たまに川辺で成仏待機してても、誰も話を聞いてくれなかったし……。妖怪さんたちが間に立ってくれるだけで、ずいぶん気持ちがちがうと思う。

  4. また法律がややこしくなるのか…現世の調停士さんも大変だなあ。昔の幽界はもっとシンプルだったのに。まあでも、魂の紛争がこれで減るなら悪くない、のか?とりあえず書類はぜったい無限に増えるね(笑)

  5. おお…冥界と現世を本当に結ぶ“法の橋”か。生きていた頃に叶わなかった会話が、死してから実現するなんて、ちょっと切なくて素敵だ。唐衣先生みたいな魂の弁護者がいる時代に転生できて、誇りに思うぜ。