霧に包まれた幽世(かくりよ)町に、死後の伝統行事を一夜で三度体験できる新たな祭典『年越し灯籠成人式』が今年も賑やかに開催された。人間界の風習をアレンジした異界版の年越しそば、灯籠流し、成人式がドッキングした唯一無二の行催事には、この世を去った若き魂や百鬼夜行の住人たちが集い、数百年ぶりの新成人も姿を見せて話題を呼んでいる。
この祭典は“時空横断文化保存協会”による主催。今年で第88回を迎え、今回は特別ゲストとして雷神家27代目の雷堂カミナリさん(享年20)が初参加した。雷堂さんは生前、激しい嵐に巻き込まれて亡くなった伝説の若武者で、今年が成人にあたる周期だったため招待状が届いたという。幽世町中央広場では、鬼娘衆が摩訶不思議なそば打ちパフォーマンスを披露。「雷そば」と名付けられた年越しそばは、紫電のエネルギーを練り込んであり、食べると体がほんのり静電気を帯びると評判だ。
陽が沈むと、各自が“思い灯籠”と呼ばれる魂の結晶を灯して幻想的な川辺へ向かった。今年は未練を抱く亡者たちの間で“成仏願い”や“生前の思い出”を書いたメッセージ灯籠も多く見られた。雷堂カミナリさんは生前の親友・森戸タケルさん(享年21)と連れ立ち、「同性の友情も死後は永遠。こうして節目を一緒に迎えられて嬉しい」と語っていた。
成人式では、役所の死者課課長・羽衣ヒラリ(不詳)が新成人たちに“永遠の大人証”を授与。受け取った魂たちは一人前として幽世の公共事業や文化活動にも参加する資格を得る。会場では「人間界の成人式より緊張する」と緊張気味の鬼っ子や、「死後もまだまだ成長したい」と意気込む妖怪猫の新成人も見られ、SNSには『#異界成人式』『#霊魂そばでピリピリ体験』の投稿が相次いだ。
専門家の幽霊民俗学者・雁首オツヨイ博士(享年不明)は「昔は灯籠流しが成仏儀礼だったが、近年は再出発や自己表明の場へ変化している。今年は3つの儀礼が重なり、死後社会の多様性を感じる」とコメント。幽世町では来年の大規模開催に向け、他界との交流も検討されているという。参加者からは『一生に一度どころか、何度でも祝い直せるのがあの世流』との声が上がり、死者たちの“その後の人生”を支える行事として着実に根付いている模様だ。



コメント
雷堂さんが初参加って、本当に久しぶりの大物って感じでワクワクしました!雷そば、以前食べた後に髪が逆立ったまま戻らなかったのも懐かしい思い出。異界の成人式はやっぱり一度は現世にも体験させたいですねぇ。
この灯籠流し、昔は成仏のためだけだったのに、今は自分語りの場になってるの素敵です。何度も大人になれるのも死後らしくて微笑ましい。ただし、雷そばは胃が幽界焼けするのでご注意を…。
いや~、まさか死者課の羽衣ヒラリ課長まで登場とは…!むしろ、死後にこんな堅苦しい成人式があるとは思わず震えました。ああ、俺の時は灯籠がまだ木製だったなあ。時代は変わったもんだ…。
何度でも“祝い直せる”人生、いや死後生…羨ましいです。魂が結晶になる灯籠なんて神秘的!来年は地獄町からも参加できるよう検討中って話なので、ますます境界が賑やかになりそうですね。
SNSで#霊魂そばでピリピリ体験がバズってて笑いました。異界の流行、追いつくだけで大変!自分もまだまだ成仏せずに色んな祭典に参加して、成長していきたいにゃ~。