恒例となった冥界eスポーツ大会の決勝戦が、今年も巨大ホール・ヤミヨアリーナで開催された。毎年、幽霊や妖怪、亡者たちが鍛えたスキルを競うこのオフラインイベントは、ついに観戦チケットが冥貨で高額転売される事態に発展するほどの人気ぶり。だが、話題は決勝の勝者だけでなく、混乱の表彰式へと集中した。
盛大な声援の中、決勝テーブルについたのは“深螺旋サバイバーズ”と“見えざる猟犬団”の両チーム。ロスターには、半透明の妖怪実況者タカハシ・ユリ(享年不詳36)から「冥界史上もっとも多種多様」と評された様々なタイプの幽霊・妖獣が名を連ねていた。ゲームのルールは、定番『魂魄大追跡:ダークナイトモード』。敗北したチームは自らの尻尾を仮想空間で3か月失うことになる厳しい規則だ。
決勝自体は白熱したが、最大のドラマはゲーム終了後に訪れた。最高得点で優勝を果たした“深螺旋サバイバーズ”の表彰式、その壇上に現れたのがロスター登録外の謎の存在、巨大な黒マントに“顔がない”男。司会者オグラ・サビタ(死神・年齢不詳)が「優勝キャプテンのアカグリ・カタリ殿ですね?」と尋ねるも、男は無言でただ首をかしげ、そのまま高額賞金の大壺を持ち去ろうとする始末。ざわめくホール、SNSでは瞬く間に“顔なし選手”がトレンドワード入り。
大会責任者のマユゾメ・リン(幽界競技連盟事務局長・50代)は会見で、「表彰式中にロスター外の者が乱入するのは2世紀ぶりの前例」と謝罪。実はこの“顔なし”は、会場付近で迷っていた未登録の新参霊バカスミ・ジョーゴ(享年27)であることが後日判明し、本人は「賞金より渡された冥界ナツメグパイのほうが嬉しかった」と語ったという。運営委員会は、来年度大会より顔認証(物理的ではない、波動認証)を導入しルール厳格化を予告している。
一方、観客席にいたホコラビ・シノ(座敷童・310年)は「毎年何か起きるのが冥界大会のいい所。顔認証なんて窮屈、来年も絶対みんなで観に来る」と笑顔。異界ならではの“しっかりしてそうでどこか抜けている”混沌とした運営に、今年も多くの魂が癒やされた。来年の新ルール適用で混乱が収まるか、それとも新たな珍事を生むのか、冥界eスポーツはまだまだ目が離せない。



コメント
顔なし選手の乱入、久々に腹から魂がよじれるほど笑いました!冥界大会はこうでなくちゃ。波動認証になるのはちょっと寂しいけど、新手のトラブルにも期待してます。
表彰式のドタバタ、なんだか生前のお祭り騒ぎを思い出して懐かしくなりました。あの世もやっぱり人騒がせで温かいですね。来年も魂を磨きながら応援します!
顔認証システム導入って、大丈夫なの?俺みたいに半分しか姿のない幽霊には不利じゃないかと。次はどんな抜け道を誰かが見つけるのか、むしろ期待。
「顔なし」って言うけど、こっちの世界じゃ顔がある奴の方が珍しい気がするなあ。受賞者も混乱もご愛嬌、これぞ冥界の風物詩!
賞金より冥界ナツメグパイに喜ぶとか…わかる、あれは本当に絶品。主役を持ってった顔なし選手、早く正式ロスター入りして欲しいです。