幽界の中心都市・繊霊市の空を舞う異形の姿が、近年大きな社会問題となっている。空中型妖怪ドローンの不審飛行や他界からの迷い雲侵入が後を絶たず、市民の不安が高まる中、繊霊市庁は新たな試みとして“幽龍パトロール隊”の設立を発表した。防空識別圏の再定義と新種防衛の動きが、民間防衛の在り方を根本から揺るがしている。
“幽龍パトロール隊”は10メートル級の幽体龍(ユウタイリュウ)五体と、幽霊と妖怪警備士10名から構成される民間協働組織だ。これまで地上中心だった哨戒拠点を、上空300メートルの気流層にまで拡張。最先端の結界紋章と、古式羽衣エンジンを搭載したパトロール龍が、市の“霊空識別圏”を24時間体制で監視する。「かつてない異界への開口部出現やドローン侵入が、私たちの防衛観を大きく変えた」と話すのは、初代隊長に任命された霊護院ほのか(38)。「龍たちの霊視力と、隊員の経験を活かし、見えざる脅威にも即応する」と力を込めた。
発端は、昨年秋に発生した“呪雷雲ドローン連続迷入事件”だった。正体不明の雲形妖怪ドローンが市上空を旋回し、住民の心霊電波や亡者郵便に干渉する事例が続出。市内では通信障害や“記憶ミスト”漏れ、さらには他界から帰還した転生鳥との衝突事故も発生していた。こうした実害を受け、繊霊市安全保障審議会は空中防衛体制の見直しを急いできた。
パトロール隊の最大の特徴は、市民からの“空鳴通報システム”を通じて、不審な霊気や妖気をリアルタイムで共有できる点だ。昨夜の初動訓練では、市北部の雲の道で異常な魔符煙が発生との通報が寄せられ、幽龍が即座に現場で旋回。ただちに結界を展開し、未登録のドローン型妖怪による侵入を阻止したという。目撃した主婦の河風つづり(51)は「龍が空を割るように舞う姿を初めて見た。安心感がまるで違う」と話す。
一方、識者たちは空中防衛の負担増や、パトロール龍への“過労化”を懸念する声も上げている。霊界大学社会安全学部の羽施俊章教授(幽狐)は「市民参加型防衛システムは画期的だが、異界側との情報共有や龍たちの健康管理も重要課題」と指摘。今後は隣接市との防空識別圏調整や、他界から来訪する旅客霊への誤認対応も課題となりそうだ。
SNS上でも「早朝から龍が飛ぶと洗濯ものが乾く」「ドローン妖怪は可愛い顔してて油断できない」など、パトロール隊への期待や独自の観察が飛び交っている。今後、空と地上をつなぐ新たな民間防衛モデルとして、幽龍パトロール隊の取り組みに注目が集まりそうだ。



コメント
ついに幽龍パトロール隊が動き出したか…!うちの界隈でもドローン妖怪の影見たことあるから、不安だったんだよね。これで安心して朝の霊気浴ができそう。
龍パトロールすごい!でも、過労が心配とか聞くとちょっと切なくなる…。龍さんたちも長い眠りが必要だろうし、無理しないでほしいなぁ。
パトロール隊って、昔の空の番人時代を思い出すな。あの頃はドローンじゃなくて、不法侵入の迷霊が多くて…時代の流れを感じるぜ。
空鳴通報システム、使ってみたい!昨日も洗濯霊が風で飛ばされたのパトロール隊に拾われないかな…。毎日いろんな事件があって退屈しませんね。
パトロール強化いいけど、これで他界から来る旅客霊にまで厳しくなったら困るな。帰省中アラーム誤発令で足止めとかは勘弁してほしい。