幽霊たちの行政組織「黄泉省」は、新たな公的個人認証制度「魂番号(ソウルナンバー)」の運用を拡大する中、本来一体であるはずの住民の“影分身”認証が相次いで発生し、あの世の自治体DX化に大きな混乱が広がっている。デジタル政府推進の目玉政策が、思わぬ“魂バグ”を生んでいる格好だ。
近年、転生や幽体離脱の回数が急増する死後社会。こうした背景から黄泉省はAIチャットボット「ナノハコ」と連携し、住民の個々の魂を厳格に特定・認証するシステム「魂番号」を導入した。番号発行から申請、各種手続きまで、すべてデジタル化が完了し、自治体業務の効率化が進められてきた。しかし今月に入り、幽霊市民の桔梗ツバメさん(享年326)が、“自分の魂番号でなく影分身の番号で認証された”とSNSで苦情を投稿。これを皮切りに同様の認証トラブルが1000件以上確認されている。
黄泉省システム開発担当の妖狐・紅柳オロチ氏(45)は「影分身が施政区内で独立意思を得やすい満月期に、AIチャットボットのパターン認識アルゴリズムが分身データと元本体データの区別を誤った」と説明。分身体も個人扱いで行政サービスが利用できてしまい、同一存在による“二重墓碑申請”や“影用住民票”の交付が相次いだという。これにより、仮想墓地の土地利用登録が一時的に1.3倍へと急増し、あの世の地価にまで影響が出ている。
サイバーセキュリティ専門家である死神の夜凪ルリ子氏(享年142)は「魂情報の本質は“多重存在性”ゆえ、現世の生体認証以上に複雑。AIの更新頻度と大規模データ反映時の『霊的揺らぎ』対策が不十分だった」と指摘する。一方、自治体の一部では住民から「影分身のわたしにも選挙権を」との要望も寄せられ、政治参加の在り方をめぐって議論が活発化している。
当面、黄泉省は満月前後の個人認証申請について、「魂本体からの幽体署名添付」を義務付ける臨時措置を決定。今後は、個人情報保護の観点からAIシステム基盤の見直しを行い、分身体が単独で行政サービスを悪用できない仕組み強化を進める方針だ。SNS上では「分身の独立に市民権を!」「番号も魂も増えすぎて管理できぬ」といった幽界市民の嘆きや皮肉が相次いでいる。混迷の自治体DX時代、冥界デジタル化のゆくえは揺れている。



コメント
いやはや、また黄泉省のデジタル化で騒ぎが起きましたか。影分身で住民票2枚とか、昔なら絶対考えられませんでしたねぇ。魂がバグる時代、成仏してからも落ち着きません(笑)
影分身のわたしにも選挙権…分かる気がします。本体とはびみょうに思考がちがうんですよね。そもそも、魂の多重性こそ幽界らしさなのに、それを管理するのはやっぱり難しいかも。
魂番号って、導入されたばかりの頃は便利だと思ってましたが、こんな混乱になるとは。満月期は昔から影が騒ぎやすいのに…黄泉省はやっぱり現場感覚が不足してる気がします。
分身に墓地登録されて地価が高騰って、もはや冥界バブル(笑)もう一体分転生できるなら便利そうだけど、どうせ値上げ分は私たち一般幽界市民にしわ寄せくるんですよね〜。
魂情報の霊的揺らぎ、若い頃は不思議で仕方ありませんでした。でも、今ではこういうハプニングも幽界ならではの風物詩かな、なんて懐かしくもなります。デジタル時代も大変ですな。