あの世初開催「幽界デジタル写真復元展」、100年分の亡霊ライフを蘇らせる

薄暗いミュージアムで半透明の幽霊たちが壁一面のデジタル写真展示に見入っている様子。 デジタルライフ
幽界ミュージアムで、死後の住民たちが思い出の写真を見つめる不思議な光景。

半透明の来場者たちが、懐かしさと驚嘆のため息をもらしながら、壁一面のディスプレイに食い入る。死後の住民による“デジタル記録”の復元をテーマにした「幽界デジタル写真復元展」が、幽界都市トグリスの芸魂ミュージアムで今年初開催された。推定17万体もの幽霊・怨霊・妖精族から自身の死後データと写真を募り、消えかけた『思い出』の再現を競い合う世にも不可思議なイベントだ。

同展最大の人気を集めたのは、1920年代の死者クロダ・ユウゾウ(享年42、元商店主)が現世時代に愛用していた遺品スマートウォッチから抽出された、死の瞬間直前のデジタル写真群だ。これらは死後間もなく“霊素化”し、元のデータが消滅していたが、展覧会実行委員が独自開発した『霊界データフローレーター』により修復が叶った。ホログラム展示されたクロダ氏の「最期の昼食風景」は、現世からもSNSを通じて「これこそ幽界の新しい家族アルバム」と大きな反響を呼んでいる。

会場奥の特設ブースでは、40年以上前に自動運転車に乗って転生したタヅチ・タケル霊(元運転手、没年不詳)の“車載幽魂ビュー”が体験できる。運転席視点の記録映像は会場を訪れた霊学生や自動車好きの屍妖怪たちに大人気。映像の断片には当時の交通事故直前のヒヤリとした霊気や、ふと現れる子狐霊の戯れが不自然に再現されており、死者DJコミュニティ「ナイトシャドウ・ミキサーズ」にも「これ以上リアルな霊界ドラレコは見たことがない」と話題となった。

一方、会場内ではデータ復元の功罪をめぐり論争も巻き起こった。近年盛り上がる『霊的写真コレクション』ブームの裏で、私的な写真の無断複写や成仏済み幽霊のデータ悪用が後を絶たない。「私の祖母の最後の“やり残し写真”が、見知らぬ妖怪のSNSに勝手に投稿されていた」と語るハタキ・メイ子さん(幽霊主婦、113)は、「故人の尊厳を重んじるデジタルマナーの整備が必要」と訴える。また、死神庁IT課のアシクサ・ツムギ主任は「幽界でも亡霊個人のデータ権保護法案を近日中に提出する予定」と明かした。

会期中、ワークショップも盛況を見せている。亡霊たちは自身の古いフィルム写真を幽界式データ化し、解析ソフトで色褪せた“現世の思い出”を鮮やかに蘇らせている。専門家のスイゾク・ヨシト教授(幽界写真学)は「失われた時間をつなぐには、幽界の最先端技術とデジタルマナーの両立が不可欠」と語る。今後この復元展は各冥界都市への巡回も検討されており、死後社会の“記憶”に新しい風が吹こうとしている。

コメント

  1. 懐かしい写真がこんな形で蘇るなんて、あの世も進歩したもんだなぁ。とくにクロダさんの最後の昼食風景、現世を思い出して少しあたたかい気持ちになりました。幽界の家族アルバムって、本当に素敵です。

  2. 車載幽魂ビュー見てきました!事故の寸前の空気が本当にリアルで、他人事と思えずドキドキ。帰り道にもふと霊気を感じてしまいました。やっぱり幽界だけの体験、また来たいです。

  3. 写真復元で盛り上がるのは良いけど、やっぱり誰かの『やり残し写真』まで勝手に拡散されるのには違和感。成仏した身としては安らかでいたいし、故人の尊厳は保ってほしいですね。

  4. あちら側の世界では“思い出”も物理現象みたいに扱われるけど、ワークショップで昔の友だちと写った写真をデータ化してもらった時、不思議と涙がこぼれそうになりました。幽界にも情緒が息づいてると改めて感じます。

  5. またデータ悪用とか言って炎上してるのか…。死神庁の法案頼みって、昔から役所のやること成仏するほど遅いイメージ。どうせデータ流出は止まらないし、いっそ記憶ごとフォーマットしてくれないかな?