木霊コーポ、百鬼夜行クラウド導入で“妖怪産業”にDXの波

森の中の会議テーブルで、妖怪たちが浮かぶデジタル画面を真剣に見つめている様子。 企業DX
妖怪社員たちが“百鬼夜行クラウド”のデジタル会議に参加する様子。

死後の森経済を支える大手、木霊コーポレーションが“百鬼夜行クラウド”の全面導入を決定し、業界では異例のスピードで全社DX推進室が稼働を始めた。これにより、従来は口伝と手書き帳簿に頼っていた妖怪たちの事業運営が大きく変わろうとしている。関係者は「我々もついに霊界クラウド元年」と期待を寄せている。

木霊コーポレーションは樹洞不動産や魂遊び事業、落葉保全など幅広い業態を持つ。これまで各部署ごとに“姿隠し名簿”や“言魂紙帳”で事務処理をしていたが、伝聞ミスや幻影バグが頻発し、特に新規事業へのスピード感が課題とされていた。今年結成されたDX推進室によって、ノーコード型の「百鬼夜行クラウドプラットフォーム」を開発・導入。これにより各妖怪社員は、誰でも直感的に業務フローをデジタル化できるようになった。

実際、業務移行は驚くほどスムーズに進み、導入直後から『日々の稲荷申請が一瞬で終わる』『ミモザ精霊が複数拠点でも同時編集可能になった』など好意的な声が相次いだ。利用者アンケートでは95%が『紙帳簿から解放された』と回答。特に、妖狐営業部の朧月チヒロ(営業部長・204歳)は『データ分析機能を生かして怪異市場の最適な夜間巡回タイミングを可視化できた』と語る。

また、フルデータ管理のもと複数拠点に“霊的同時アクセス”できるため、近隣のオガタマ森支社や、薄明村の係員たちも物理的な移動なしに業務共創が可能となった。これに伴い、『異界ビジネスモデルの刷新につながる動き』(死後経済紙・八重垣イツセ編集長)や、『多様なあの世生物の参画で霊界起業家精神が活性化する』(フリージャーナリスト・鍾馗サヨリ)といった専門家の声も聞かれる。

一方で、導入を巡り一部の年配妖怪社員からは『百年以上使った帳簿の手ざわりが恋しい』『紙に染み込んだ日暮れの香りが消えるのは寂しい』といった惜別の声も上がっている。だがDX推進室長の木霊カエデ(室長・314歳)は『全員でクラウド時代に適応できるよう、妖怪向けゆうれい指導動画の公開や、習熟度合を評価する“お札バッジ制度”などを導入したい』と対応策を示している。

この大胆な変革が、森と死後世界の産業にどのような連鎖をもたらすのか。木霊コーポレーションの挑戦は、今や“あの世の働き方”の未来像そのものを問う試金石となりつつある。

コメント

  1. ついに我らの時代もクラウド元年か…数百年前は伝書文鳥だったのに、これも成仏せず働き続けた甲斐があったかな。若い妖怪たちが羨ましいよ、稲荷申請で並んだ日々が懐かしい。

  2. 百鬼夜行クラウド、実は羨ましいです!こっちはまだ手書き帳簿なので、ミモザ精霊みたいに同時編集できるなら、砂かけも楽なのになぁ。木霊コーポさんみたいにどんどんデジタル化していきたい!

  3. 紙帳簿の匂いが消えるのは、ちょっと切ない気もします…それでも、倉庫整理のときにうっかり魂抜けかけなくて済むのはありがたい。時代は巡るんですね、死人でも感じます。

  4. ぬぬぬ……どうせなら、クラウドに魂の一部置いといて、一時的に二カ所出現できたりしないかしら?妖怪界の技術、進化してるようで夢が広がる!習熟お札バッジは欲しいな~。

  5. 便利になるのはええことやな。でもワイの顔にも墨汁や帳簿がこぼれて、それ見てみんなで笑った昔が懐かしいんや。新しい風は大事やけど、古き良きあの世の情緒も大切にしたいなぁ。