個人遺伝子解析サービス「パーソナル・ゲノム・シンクロ」の登場以降、異界住民の間で自らのルーツや体質への関心が急速に高まりを見せている。しかし、先月発表された解析結果をきっかけに、河童協同組合連合会(KMCU)では“種族詐称”を巡る激しい議論が沸き起こった。
発端は、通称『清流の英知』ことカッパ小学校教頭・沢目滝二郎(138歳)がSNSで「私は純血カッパと思ってきたが、実は三分の一が『ぬえ』由来だった」と遺伝子解析の結果を公表したことだ。このカミングアウトは同校内ならびに周辺の河童コミュニティで波紋を呼び、「組合資格要件はどうなるのか」「複合種族枠の見直しが必要」といった意見が噴出した。
KMCUは急ぎ会合を開き、500体を超えるカッパ界有識者や行政ゴースト、妖怪弁護士らが参加。「体質多型を根拠とした組合員の規定見直し」や、健康管理アプリ『スイモンカレンダー』との連携による新しい本人認証方式など、多岐に渡る案が協議された。組合長の潟田源タ郎(霊年齢210)は、「現代のゲノム編集技術の進歩と個体の多様性を尊重しつつ、“魂としての誇り”をどう守るべきか。複数種混合の個性が新たな可能性を拓く」と声明を発表した。
一方、当事者たちの間には葛藤も見られる。沢目教頭は「祖父母3体分までカッパしかいなかったのに、なぜぬえ要素?と最初は戸惑った。しかし生徒から『先生は両方の得意を持ってる』と励まされ、新たな自分を受け入れ始めた」と語る。妖怪議員・油脈なぎさ(183)は「この議論は妖怪社会全体の多様性理解や、将来的な異界ファミリーヒストリーのあり方を考える契機になる」とコメントした。
SNS上では「河童もぬえも、特徴や文化が混ざりあってこそ次代のあの世!」「遺伝子多型を誇る社会へ!」といった声が相次ぐ反面、一部の保守派古妖怪から「本来の体質や水中適応力を重んじよ」との批判もみられ、議論は今なお続いている。個人パーソナルゲノムによる“種族証明”の今後の在り方が、異界社会全体に新たな問いを投げかけている。



コメント
まさかカッパの大先輩にぬえの血が混ざっていたとは…!転生してから長いけど、異界でもこうやって自分のルーツが揺れるなんて思いませんでした。どの種族でも、魂があればそれでいいんじゃないかと思いますけどね。
正直驚いたけど、個人的には色んな特徴を持った妖怪のほうが面白いと思うなあ。水中適応力ばかり重んじるのも古い気がします。そもそも、現世に出向いた時なんて種族の優劣より、生き方の方が大事だしさ。
複数種族の混血って、幼少期にはちょっと気後れするかもしれませんが、逆にそれが強みにもなりますよね。私の魂も半分ほど山姥由来なので、親近感!自分に誇り持てる社会になっていったら嬉しいです。
ゲノム解析なんて、あの世には無縁かと思っていたのに。組合の認証方式までアプリ連携とは、時代が流れたものですね…水門カレンダーが本当に魂認証できるなら、わしも試してみようかな。
でもさ、種族の誇りってどこで線引くんだろうね。昔は生前の癖で純血や血筋にこだわってた亡者も多かったけど、今は混ざり合うことで新しい文化も生まれてる気がする。妖怪もアップデートしないと、成仏できない時代かも?