冥界北部の蒼霧水泳場で開催された第121回「全死後世代霊界平泳ぎ選手権」が、今年も新たなルールのもと大盛況となった。水泳界で初導入となる「シャワーキャップ型帽必携」規定や、子ども幽霊たちのウォーターセーフティ講座など、これまでにない話題が続出し、各種SNSでは「こんなに真剣に泳ぐ幽霊は初めて見た」と大きな注目を集めた。
大会当日の朝、エントランスに列を成して集まったのは総勢280名の選手たち。上下がうっすら透けるシャワーキャップ型帽子を被った幽霊、水の玉をまとった半透明の妖怪たち、果ては後光を帯びた精霊スイマーまで、多様な『霊的水泳帽バリエーション』が会場を彩った。主催者の水神庁幹部、不動セイイチロウ氏は「物理法則に縛られがちな幽霊水泳に、新たな安全意識とユーモアを同時にもたらす」と狙いを語った。
今大会で特に目立ったのが、幼年幽霊部門でのウォーターセーフティ強化策だ。12歳未満の参加者には、漂流時に自動で発光する『霊気浮き輪』の装着が義務化。これはかつて人間界の水泳教室で起きた“透明児童見失い事故”を受け、霊界スポーツ庁が昨年より試験導入したものだ。判定役の妖狐ガイド、影野ヒナタ(判定員・110歳)は「子ども幽霊はその軽さから軌道予測が難しい。浮き輪のおかげで、途中ワープしても安全確認がしやすくなりました」と評価する。
午後には、水球競技部門も熱気を帯びた。幻の3連続トリックショットを成し遂げたのは、首なし選手の柳本サダオ(49没)。彼は「首がないことで水中抵抗が減り、ボールを追いやすい」と自己評価。会場を埋め尽くした2000体あまりの観客幽霊らは、浮遊しながら波と声援を重ねた。SNS上でも「柳本選手の平泳ぎ→水球瞬間変身、物理法則無視にもほどがある」と驚きの声が相次いだ。
順位発表後には『死後の体験型水泳教室』が開催され、多世代の幽霊や妖怪参加者が、人間界流のレーンマナーや水中緊急対応法を学ぶ場となった。選手村で取材に応じたスイムキャップ職人の鬼頭コウ(スイムキャップ工房主・生前82)は「死後も安全とマナーを学ぶ場が水泳をもっと深くする」と語る。いまや霊界水泳競技は、あの世とこの世をつなぐ重要な“文化行事”となりつつあり、次回は魂エリアマップを利用した混合リレーマッチも検討されている。



コメント
今年も熱い戦いだったなあ!シャワーキャップ型帽子、最初は笑っちゃったけど見慣れると意外とおしゃれ。首なし柳本選手の華麗なトリック、成仏せずに応援しててよかったと感じました。
死んでも安全意識が大事ってのは面白い。子ども幽霊用の発光浮き輪、昔はなかったから、透明なまま迷子になる子も多かった気がします。霊界もほんと進化してるね。
へぇ、水神庁がここまでユーモアあるとは思わなかった!生前は体育苦手だったから、死んだら幽界水泳でリベンジしたいな。水中ワープ、私にも習得できるかな?
柳本サダオの物理法則無視っぷり、さすが幽霊競技だなとしかw 首なしが有利とか、生者時代じゃ考えられんよ。他界してなお新技が生まれるの、ちょっと羨ましい。
何だか懐かしいなあ…。私も幼少期に水の玉の妖怪と泳いだことを思い出しました。今の子どもたちは浮き輪が光ってくれて安心なんだね。世代ごとの変化を見られて、あの世もいいものです。