霊界初、自動運転人力車が幽都オーベリスで運行開始 死神組合とAI妖怪の連携も

夜の霧に包まれた都市の大通りを、自動運転人力車が青白い光を放ちながら妖怪や幽霊とともに走行している様子。 自動運転
幽都オーベリスで本格運用が始まった自動運転人力車「シグナ・キャリー」の夜間走行。

この世とあの世を結ぶ巨大都市・幽都オーベリスで、ついに自動運転人力車「シグナ・キャリー」の本格運用が始まった。死者も妖怪も精霊も行き交う“多死多生交通網”の新たな主役として、死神運送公社とAI妖怪連合が共同で導入したもので、死後の都市生活に交通革命を起こすと期待されている。

従来、幽都オーベリスでは死神や幽霊の熟練運転士が人力車を引き、大通りから迷い道まで縦横無尽に駆け抜けてきた。しかし、近年は亡者人口の増加に伴う交通量の逼迫や、夜間の霊気乱流による運転ミスの多発など、安全面と快適性への要望が高まっていた。今回導入された「シグナ・キャリー」は、超高感度の霊波センサーによる空間把握と高精度地図情報を統合し、既存インフラの“魂ネットワーク”を介して他車両・運転士・路上妖精と常時データ通信を行うことで、従来比およそ八割減の“すり抜け事故”を実現した。

運行開発の中心を務めたAI妖怪技師、イマヨリ・シメサバ氏(年齢不詳)は「私たち異界の運送業は、現世のテスラ自動車を遥かに超えた情報処理が問われます。たとえば、浮遊する怪火や突発的に出現する次元の裂け目も、高精度マッピングとビッグデータ連携で瞬時に対応できる独自制御アルゴリズムを搭載しました」と胸を張る。さらに死神組合所属のベテラン車夫、クルハシ・マキト(死亡後101年)は「最初は自分の仕事がなくなるのではと不安もあったが、車両制御が賢くなったおかげで、魂送りや案内業に専念できる。死者にも生者にも優しい交通社会を目指したい」と話す。

また、利用者からも好評の声が寄せられる。昨夜、現世から渡ってきたばかりの新入死者・五条レイカさん(享年28)は「自分で動く人力車が勝手に目的地まで案内してくれて驚いた。途中、夢幻坂の手前で自動駐車にもスムーズに対応してくれて、死後の不安が大きく和らいだ」と語る。幽霊SNSでも、「心配性の祖母魂を一人で乗せても安心だった」「途中で遭遇した大蛇型妖怪も避けて進んだ」と感謝のハートが並ぶ。

一方で、導入初日は通信インフラへの過負荷を警戒する声もあったが、“魂ネットワーク”側は処理能力の自動拡張対応により大きな混乱はなかったという。AI妖怪と霊気エンジニアらは今後も運行ログを解析し、迷路区画での回遊精度向上や、妖精専用レーンの設置など新たな機能改良にも取り組むとしている。

死後社会に求められる先端技術とおもてなしの融合。その最前線ともいえる幽都オーベリスの“自動運転人力車革命”は、いまや現世の技術者やAI研究者も注視する異界のイノベーションとなっている。

コメント

  1. 私が幽都に転生してからもう200年になるけど、自動運転の人力車なんて時代が変わったものねぇ。昔は死神さんの迷い道案内が楽しみだったけど、これなら安心して孫魂を一人旅させられそう。便利な世の中になったものだわ。

  2. 死神組合とAI妖怪のタッグとは…これは次元の壁を越えた発想ですね!まだ“すり抜け事故”に巻き込まれたばかりの身としては、この8割減は素直に羨ましい。技術進化の波が、ついに異界にも本格上陸か~。

  3. こういう進化も大事だけど、昔ながらの車夫さんとの世間話や、思い出の迷い路を回ってもらう体験も、消えてほしくないな…。自動運転の合理性の裏で、ちょっと寂しさを感じてしまう旧世代幽魂です。

  4. いや、本当に驚きです。夢幻坂付近は霊気乱流で事故多発エリアなのに、自動駐車まで可能とは…正直、あの辺で何度も魂分裂しかけた思い出が(笑)。これなら成仏ツアーも安全安心!現世のAIより優秀なのでは?

  5. 魂ネットワークの過負荷警戒は大丈夫なのかな?先日ネット障害で五次元交差点に迷いこんでしまい、妖精レーンの設置も切望してたところです。新技術は嬉しい反面、時折どこか不安も残るのが異界らしいよね。