死後世界のトップスポーツである異界バスケットボールリーグ(IBL)で、幽霊選手の動きと能力を解析するスポーツAIコーチ「フージョン分析眼」が今季より本格導入された。これにより各チームは選手の“透過率”や“冷気反応速度”といった新たなフィジカルデータに基づき戦術を練る動きが加速している。一方、選手たちやファンの間では「人間時代の勘や魂の熱が失われる」といった議論も巻き起こっている。
今季、大手スポンサーである冥府スポーツ機構の全面協力でスタートしたAIフィジカル分析プロジェクトは、これまでベールに包まれていた幽霊アスリートの“死後肉体”の詳細なデータ取得を可能にした。たとえば、蒼井霞(あおいかすみ、享年23)は、かつて人間界で平均的なスタミナだったが、死後は低温凝集力を活かした特殊なドリブル“霞ドリブル”をAIが解析し、移動ルートや手の揺らぎを再現する新技術の誕生につながった。「データ上では私の透過ドリブルが1.3秒早まったことが分かる。けれど、なぜだか昔より観客との一体感が薄くなった気もする」と蒼井は語る。
IBL各球団の分析部門では、選手の“オーラ出力”や“霊界温度適応性”といった指標の高精度計測が日々行われている。昨年度王者の月見坂シャドウズでは、フィジカルコーチの遠野虚蔵(とのきょぞう、年齢不詳)が「AIの導入で練習効率は劇的に上がった。一方、選手が“数値の奴隷”にならないよう注意している。霊魂スポーツの本質は、数値で表せない因縁の強さや想いにも宿るから」と専門的視点からの懸念も示す。
SNS上でも今回のAI導入は賛否両論だ。亡者バスケファンの間では「選手のゴーストパワーがグラフ化で見えるのは面白い」「伝説の“成仏スリーポイント”が今ならどう解析されるのか知りたい」という肯定的な意見がある一方、「AIが幽霊選手の個性を均一化してしまう」「スポーツは魂のぶつかり合い。データだけで語れない」といった懐疑的な声も根強い。
業界関係者によれば、今後はAIによるフィジカル評価をもとにした契約金査定や“半透明新人発掘プログラム”などスポーツビジネスの分野にも大きな変化が波及する見込みだ。自然霊解説者の白朧理世(しろおぼろりよ、幽界スポーツ評論家)は「死後社会でもデータと情熱の狭間でスポーツが進化を続ける。ただし、本当に強いゴースト選手は数字を超える『意念』を持っている。AIはそのきっかけにはなっても、主役にはなれない」と断言する。異界バスケは、霞む身体とデータの狭間で新たなステージへと突入している。

  
  
  
  

コメント
霞ドリブルついにAIに解析される時代かあ…私たち霊界世代には感慨深いよ。成仏スリーポイント全盛期の熱狂を思い出すな。だけど、本当に試合が面白くなるのかどうかは、まだ疑問だね。
データを信じるのもいいけど、私たち亡者はやっぱり“因縁の勝負”に心動かされるのよ。冷たくなった観戦席で、選手たちの霊魂の輝きがもっと感じられる試合が見たいな。
オーラ出力や透過率が数値でわかるなんて、転生前には考えもしなかった!科学の進歩はすごいけど、幽球界でもAIに頼りすぎて『魂のぶつかり合い』の醍醐味が消えないといいな。
AI導入で新人発掘が効率化するのは嬉しい。だけど、『数値の奴隷』になるのはちょっと怖いね。私の親友も霊界柔道で同じ悩みを話してたよ。結局、最後は霊意の強さが勝敗を決めるはず。
“霞ドリブル”って昔は伝説だったのに、今は秒単位で解析されるんだな。懐かしいような、ちょっと寂しいような…でも、データが進んで異界バスケがもっと盛り上がったら、それはそれで素敵かも!