全国の黄泉原自治区連合会はこのほど、消費税に新たな“霊界外部性調整課税”を乗せる野心的な政策案を発表した。制度運用の舞台となるのは、河岸に浮かぶ幽町（かすかまち）区の公会堂温泉。その運営財源の一部に“ふるさと霊納税”を導入し、老朽化した幻霊ボイラーの再生可能エネルギー化を狙う。財政の健全化と霊格格差の是正、異界ならではの外部性の効率的分担という、これまでにない公共経済実験に注目が集まっている。
幽町区公会堂温泉は、三百年の歴史を誇る大規模霊浴施設。かつては死者の心身癒やしスポットとして賑わったが、近年は生者の観光客激増と幽霊住民の減少で運営が危機に瀕していた。区長の真霧氷一（まきり・ひょういち、265）は「循環型エネルギーへの転換によって霊界独特の“余韻エネルギー”を有効活用したい」と語る。だが費用負担の重さが財源確保の課題とされてきた。
そこで町役場は今年から、他界の幽霊・妖怪が自らの“成仏ポイント”を選んで寄附できる新制度、“ふるさと霊納税”を創設。これによって幻想温泉の熱源を、先祖の夢想残留エネルギーから、エコ墓石集約型のグリーン発電に更新する方針だ。寄附者には幽町区限定の温泉霊泉利用権や“霊格強化くじ”といった特典が授与される。また、寄附状況はSNS“あの世の一覧表”にもリアルタイム反映され、互いの隠れた故郷意識が可視化されつつある。
だが町外在住の死後市民の間では「繁忙期に生前納税者の優遇不公平が拡大する」との批判も噴出。くぐり門前の幽町商店街連盟理事・灰嵐銀造（はいらん・ぎんぞう、178）は「消費税を上げて効率を求めすぎれば、零細浮遊者の暮らしが圧迫される」と警鐘を鳴らす。一方、幽界エネルギー連盟の政導霜子（せいどう・しもこ、204）は「死後世界の外部性コストを“ふるさと”で分散・還元するこの取り組みは、異界自治の進化系」と期待を語る。
こうした動きは全国の“消えかけ自治体”にも波紋を呼んでいる。冷蔵魂トラスト調査委員会の分析によれば、今年度だけで類似制度の創設を前向きに検討する異界自治体が18か所に増加。SNS“気流シグナルズ”では「親亡き後も“魂納税”で故郷に貢献したい」「地方間霊格格差の少しの是正になるかも」などの声も投稿されている。未だ転生回数に応じた控除規則など課題は山積だが、“ふるさと霊納税”が死後公共経済の新たな光として根付く日は、遠くないかもしれない。
コメント
ついに温泉までグリーン転換の波…我が幽町の誇りなので応援したい反面、成仏ポイント寄付って転生直前の者にはキツいな。生前納税者への優遇とか昔から続く話だけど、バランス崩さないようにしてほしい。
懐かしいなあ、公会堂温泉。よく霊仲間と夜明け前まで語ったものです。ふるさと霊納税でまた活気づくなら嬉しいけど、親の魂もまだ現世だし複雑です。
エコ墓石グリーン発電、最初は冗談かと思ったけど本気なのか。異界の進化も早いものね。外部性コスト分散って幽界らしい発想だし、ちょっとワクワクしています。
またしても消費税…零細浮遊者には地味に響く。生者向け観光優遇が続くと、もともとの幽霊住民はどうなるのか？私たちもこの世と同じ格差に悩まされるとは。
温泉霊泉利用権とか霊格強化くじって、妙に懐かしくて微笑んでしまった。昔も似たような特典で盛り上がった時代があったね。新しい風が吉と出るか凶と出るか、成り行きを見守ります。