最近、幽界各地の家庭で急速に普及しつつあるのが、幽霊たち専用のスマートホームデバイス「幽居(ゆうきょ)コネクト」。かつて結界や札頼りだった日常防犯・快適管理が、ボタン一つ、さらには念じるだけでコントロール可能になったと各界で話題だ。今や、伝統に新技術が融合する“現世式ホーム”こそが、幽界の新たなトレンドとなっている。
開発元である薄明テクノロジーズ社は、正式な幽界認証を得て今春より『幽居コネクト』シリーズを発売。家屋に漂う霊圧センサーと念波対応スマートプラグを組み合わせ、カーテン開閉や玄関ロック、気温・湿度調整などを完全遠隔操作できる仕様が好評だ。特に評判を呼んでいるのは、無断侵入した不審霊――時に現世出身の成仏していない浮遊者や、失礼な妖狐型配達員など――を察知し、室内全域に警告音を流す「結界アラート」機能。発売からわずか1ヶ月で累計4万棟への導入が報告された。
朝霞村在住の座敷童子・双葉常世(68)は、「以前は毎晩障子に塩を撒いていましたが、幽居コネクト導入後は就寝中も安心です。玄関付近で霊的な動きがあると、温度計が青白く点滅し知らせてくれますし、外出先でもスマート鏡から様子が確認できるので助かります」と話す。とくに冬場、多忙な妖怪ファミリーからは『うっかり幽霊ヒダマリ点火』機能(自動で床から霊炎を炊いて家の体温保持をサポート)が絶大な支持を集めている。
一方で、伝統派の古参幽霊やヒヒシャン僧侶会からは慎重論も出ている。幽霊評論家の土暮陽炎(53)は「スマートホームの遠隔操作に怯える動く仏壇や、結界の自動修復に頼るあまり修行や護符貼りを怠る若者が増えています」と指摘する。運用ミスによる“霊的室温暴走”や、“あの世LINE”経由の不正アクセスも散見されるため、家庭ごとの念力パスワード強化が当局からも推奨された。
SNSでは「寝巻きのまま起きてすぐ念じて全部ONにできて助かる(浮遊霊・蒼夜)」や「母の寝坊を遠隔で起こせて便利すぎる(妖怪中学生・十三夜美子)」など、利用者の率直な声が飛び交う。さらに、複数世帯用のシェア霊屋モードや、空家の霊道監視サービスも順次開始予定。現世事情と異界文化が入り交じる中、幽界家庭のスマート化は、“見えないセキュリティと見える安心”という新しいライフスタイルを定着させつつある。


コメント
とうとう幽界にもスマートホームの波がきたか…!寝ぼけたまま念じてカーテン開くのは地味に便利そうだけど、昔ながらの塩撒き作法が恋しくなる瞬間もあるんだよね。
うちも幽居コネクトを導入しましたが、無断で入ってきた元同僚が警告音で飛び上がってて笑いました。あの世も技術進歩でどこか殺風景になる気もしますが、冬のヒダマリ点火は最高です。
昔は家の結界を家族みんなで修復したのが行事だったのに、今は全部機械任せで少し寂しい気もします。若い霊が護符の貼り方も知らないなんて…時代ですね。
正直、あの世LINEから不正アクセスされたことが一度あります。便利なのはいいけど、やっぱり結界アラートの念力パスワードはしっかり設定しないと怖いな。現世と違ってデータ消しても残るし…
さっそく霊圧センサーに反応されてしまい、昼寝中に家族全員集合(強制)。便利だけど油断できない。でも母が外出先から“そろそろ起きなさい”と念じてくれるのはちょっと嬉しいです。