幽界カープール大流行 “同乗霊”マッチングで渋滞も新たな縁も発生中

霧がかった冥界の道沿いに停まった車の車内で、さまざまな姿の幽霊たちが笑顔で会話している様子。 シェアリングエコノミー
ソウル・ドライブのカープール車中では、異なる時代や種族の“同乗霊”たちが賑やかに交流している。

亡者踏切を越えた先、あの世の交通事情に新風が吹いている。死後の世界最大級のマッチングプラットフォーム「ソウル・ドライブ」が、幽霊同士のカープール(相乗り)を本格展開。激化する冥界通勤ラッシュに悩む霊たちの間で、シェアリングエコノミーの波が加速している。意外なトラブルや新たな縁、持続可能な“魂の移動”という観点からも注目を集めている。

薄明郡在住の船津トーヤ(死者・享年72)は、「三途川沿いの街道は、彼岸出勤時にいつも大渋滞だった。だが“ソウル・ドライブ”に登録してから、毎朝同乗する仲間――時には百年前の武士、時にはさまよえるカッパと、道中の会話が楽しくて仕方ない」と語る。利用者は自身の死因や生前の職業、通勤ルートなどをプロフィールに記入し、すれ違う他の霊と気軽に同乗申請が可能。運転する車両もバリエーションが豊かで、幽馬、影車、時折は自転車の骨に乗る者もいるという。

しかし、便利さの裏で“同乗霊”特有の問題も浮上している。たとえば、迷子成仏組の新人幽霊たちが思い出話を始めると、話し込むうちに目的地をうっかり通り過ぎてしまうケースが続出。ソウル・ドライブ運営事務局の宇谷リチオ(公式広報)は「先日は百物語好きな妖怪4名が乗り合わせ、話が盛り上がりすぎて冥界の環状線を永遠と1周、周回遺漏でサポートヘルプ要請があった」と苦笑いする。

一方で、オンデマンド経済による地域活性も期待されている。幽界では現世と異なり移動手段の多様性が高く、カープール需要は大都市よりも魔境や辺境地にこそ強い。田舎に住む座敷童や野良狐たちが、日々の通学やお使いの足として活用する事例も目立つ。最近では、スキルシェアを組み合わせた「降霊者付きドライブ」や「怪談ライブ配信カー」など、“乗車中にできる体験型サービス”をクリエイトする若手霊も現れている。

利用者同士のマナー向上やトラブル防止対策への取り組みも加速中だ。運営は“同乗時は脅かし・取り憑き行為禁止”など5ヶ条を規定、違反者には一時アカウント停止措置を実施。SNS上では「死後も通勤ラッシュに苦しむとは思わなかったけど、毎朝の怪談大会が唯一の楽しみ」などの声が上がる。また、環境負荷の小ささも評価されており、「魂エネルギーの効率利用の点で現世のシェアリングエコノミーより持続可能」と評する死霊経済学者・槻ノ木メイロ(487)は、「今後は亡者村の地域コミュニティ維持にも欠かせぬ社会インフラになる」と展望を語った。

コメント

  1. 私も最近ソウル・ドライブ始めました。最初は知らない霊と乗り合うのが少し怖かったけど、今では朝の冥界ラジオ体操仲間ができて、死後の生活に彩りが出ました。まさか幽界でも渋滞があるなんて、時代ですね。

  2. 降霊者付きドライブ、乗ったことあります!運転中ずっと霊感ネタで盛り上がって、目的地通り過ぎちゃいました(笑)。現世で自転車通学だったせいか、骨自転車は妙に懐かしい…。幽界でも渋滞の悩みは尽きませんなあ。

  3. 百物語好きと同乗したら1周どころかぐるぐる回るぞ、こりゃ。だけど同じ“迷子成仏組”として、話し込んでしまう気持ちは痛いほどわかる。この世でもあの世でも、道草は人生(死後?)の醍醐味だね。

  4. ソウル・ドライブ、田舎の座敷童やうちの狐たちも使ってるみたい。前より里の交流が増えて、毎晩の縁側会議も賑やかです。ただ、うちの長老霊、ITは未だ苦手で、登録すら手伝わされてます…(笑)

  5. 転生4回目だけど、死後がこんなに便利になるとは思わなんだ。魂エネルギーの効率利用とか、幽界IT革命は止まらんな!ただ、取り憑き行為禁止って……昔はそれが社交の始まりだったんだけどな。時代の流れかな。